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陸游詩選 (岩波文庫)

価格: ¥903
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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ハンディな漢詩集としてすばらしい ★★★★★
南宋の詩人、陸游の詩160首余りに訳注を施し、制作年代順に配列したものである。著者による岩波の中国詩人選集『陸游』にさらに70余首を加えた内容になっている。詩を選ぶにあたっては「詩人の年齢、詩型などのバランスを考慮し、通読すれば陸游青年期以後の一生と、作詩の特徴を概観できる」ことを旨としたと述べられている。

この詩人には「閑適」と「悲憤」の両面が混在しているという。著者は簡潔にして要をえた解説の中で、詩人の「身辺のささやかな幸福をねがい、それを大切に守ろうとした、よい意味での常識人」としてのあり方を指摘し、日常の幸せを歌うに加えて、それを守り抜くための不当な権力などに対するスケールの大きな「激昂」があったのだと言う。(それは著者一海知義先生自身の姿でもあると私は推察する。)

読んでいると、かつて著者のもとで陸游の詩を学んだ記憶がよみがえってくる。勉強不足の生徒であったが、緻密な読みを通して詩一篇に一人の人間の全体がいかに反映しているかを知ることができた。訳文が非常にわかりやすい現代日本語で書かれていることは特筆すべきだろう。ハンディな漢詩集として、とてもすぐれた一冊だと思う。
南宋時代の大詩人に教わる官僚の心構え ★★★★☆
偶然手にした、この岩波文庫「陸游詩選」をめくると84頁に「読書」という以下のような漢詩(七言絶句)があった。

 「帰老寧無五畝園」
 田舎に帰れば、わずか五百坪ではあるが畑がある
 (だから官吏を退職しても喰うに困ることはない。)

 「読書本意在元元」
 読書本来の意味とは、国民に尽くすことにある

 「燈前目力雖非音」
 視力は昔より衰えていると言えども

 「猶課蝿頭二萬言」
 それでも私は蝿の頭ほどの小さな文字を二万語ほど読むことを自分に課している

「陸游」(1125−1209)は、南宋の大詩人だった。作者は当時五三歳の官僚であった。そろそろ目も衰え、職を辞して、田舎へ戻り、質素な生活をする直前の心境であろうか。しかしそれでも、この詩人官僚は、小さな文字を読み、人々のために向学心を絶やさないのである。

この詩を読みながら、先頃逮捕された防衛省守屋某という人物との落差を情けなく思った。

この中国の陸遊と守屋某を分かつものは何であるか。それは陸游という人物が、常に人々の幸せを思い、そのために自分の人生はあると思って努力を怠らないという一点にあったのではないだろうか。

古今東西において、官僚の人々が陥る第一のつまずきは、いつの間にか、公私の切り分けが分からなくなることに始まる。そんなことを、陸遊の詩は、教えているのではないかと思う。他にも味わい70歳で詠った「晩秋の農家」など味わい深い詩が並んでいる。