「宋代=士大夫文学」のイメージが変わった
★★★★☆
高校の時、世界史の時間に習った士大夫文学のイメージは、「進士試験に合格した高級官僚で、生活的にも安泰だった人たちの引退後の理想を描いた浮世離れした文学」だった。(だって、そう習ったよね?)
でも、実際にこの本を読んでみると、蘇軾は官僚としては決して恵まれた人ではなかったことを知った(というか昔習ったけど、ずっと忘れれてた)し、残ってる詩だって、むしろ2度の流罪中に百姓してる時代や地方に飛ばされて異動中の詩が多い。そんな中で、「せめて引退したら田舎に草庵を持って暮らしたい」と望みながら生きていたんですね。読み心地としては、そういう過酷な境遇を経て世捨て人のように達観していった「元・超エリート」の彼が、逆境で詩を読み続けた泥臭い精神力と底堅いユーモアを感じます。
そんな「逆境の文学」であり、同時に「酒飲みの文学」でもあった彼の詩は、永遠の古典として愛されてきたし、これからも読み継がれるのだと思う。