厚みある経済思想史の概説書!
★★★★★
本書は計22人の経済学者(ないしは社会学者)を系統的に扱った経済思想史の概説書である。それぞれの専門家による独自の考察が、経済思想史を学ぶ意味を説得的に示してくれているような気がする。残念ながら初学者にはやや難しいかもしれないが、自分が興味関心をもった論者の箇所をじっくり読み、そこから更に、「読書案内」に掲げられている諸著作へと少しずつ挑戦してゆけるよう配慮が施されている。私自身、すべての論者を読んだわけではないが、本書からは教えられることが多かった(マーシャル、マルクス、スラッファそしてハイエクなど)。序章における「経済思想史を学ぶ意義」の箇所から、次のような文章を引用しておきたい。「恐らく、経済理論や経済思想の歴史を学ぶことのもっとも積極的な意義は、現代の経済学説が拠って立つモノの考え方=見方の妥当性や根拠を不断に問い返すことを我々に要求するところにあるのではあるまいか」(6頁)。完成された経済理論のみを学ぶだけでは、経済学の真の面白さや醍醐味はなかなか理解できないのではなかろうか。「社会認識の諸類型」という本書のサブタイトルからも、理論や思想の「多様性」を感じ取ることができる。経済思想史を学ぶ価値は依然として大きいことをあらためて痛感させてくれるという意味でも貴重な概説書・研究書である。