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天下の副将軍―水戸藩から見た江戸三百年 (新潮選書)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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水戸に行くなら必読書 ★★★★★
偕楽園に行くので、購入しましたが大変面白い。もともと紀伊、尾張に比べて格が違う水戸藩。それゆえ歴代の水戸藩主が御三家と後世に呼ばれるようになるまで、その地位を将軍世継ぎの家系からは距離を置き、ご意見番としての立場で存在感を示そうと知恵を絞る。また、その日本史編纂も、膨大な経費がかかるのを、徳川家からの嫁を通じて無心したあたりは興味深い。黄門さまとは権中納言の別称で光圀公だけでは無いのは意外と知らないかもしれない。そもそも水戸藩は尊王攘夷であったにも拘らず、将軍職が回ってきたため、恰も賊軍のように思われてしまったのは気の毒という他にない。光圀公の隠居場所である西山荘に行ってみたが、これを読んで行くと、何故あの場所に隠居所があったのかも納得行く。運河を作ろうとしたり、進取の気鋭に富んでいた光圀公の話は、現地のガイドも知らなかった。
歴代水戸藩主のコンパクトな物語 ★★★★☆
水戸黄門様の考えやそれに繋がって語られる水戸学の流れは物語を読むようなカタルシスを感じる。きちんと著者の考えに沿って語られる「歴史」は理論整然として、当然の様に読者を心地のよい水戸藩崩壊絵巻へと導いてくれ、そうか、そうだったのかと得心させてくれる。黄門様の尊王と徳川家への忠節、幕末の藩主・斉昭の以外に広い知識欲、その後の幕末の藩政崩壊の様子などは枝葉をそぎ落としたからこそ、非常にわかりやすかった。思想史・藩政史が中心になっているので、水戸藩政治の流れを知る入門書としても最適ではないでしょうか。
「謎多き水戸藩の奇史から読み解く新しい江戸時代!」と裏表紙にありますが、全然に際物ではなく、著者のやわらかい語り口からやわらかい内容を想像してしまいがちではありますが、どうしてどうして、読み応えのある「水戸藩の歴史からみた江戸時代史」でした。
水戸藩から、徳川政権を考える ★★★★★
 日本史全般で、水戸藩の取り上げられ方といえば、二代目光圀の「大日本史」編纂。あとは、九代目である斉昭の強硬な「攘夷」論と、その為に、幕府に命じられた蟄居。そして、その幕府の命を不満とした水戸浪士による井伊直弼の暗殺により、全国に尊王攘夷運動が、飛び火したーと、いうような記述。
 だから、徳川「御三家」でありながら、どうしてそれを崩壊させるような動きを示したのか?体制側である自分たちから、尊皇攘夷の論理的な口実を与えるようなことを、何故したのか?という、不思議な藩というのが、水戸藩の印象だった。
 しかし、この本を読めば、その疑問は解ける。
 この本には、「水戸学」と「藩の経済政策」を軸に、水戸藩の歴史が書かれている。
 御三家は、八代将軍吉宗が制度化するまでは、正式に認定されたものではなかった。それに、徳川親族の家といえども、嗣子がいなければ断絶というのがめずらしくもないなかで、尾張・紀伊両家にくらべて、石高の低い水戸藩が、「武威・学問・見栄によって、水戸藩の家格を上げようと苦慮した」始めの三代藩主のいきさつが、説明される。
 それから、貧窮にあえぐ水戸藩の、数々の経済政策の失敗。
 そして、幕末期には、水戸藩の構造上に抱える問題(藩主の江戸定府)が、家臣の派閥化をうながし、それが水戸学と結びついて、どのような動きをしたかについて述べられている。
 結局、それが水戸藩そのものの致命傷となり、急激に自壊していくさまと、幕府の崩壊が説明される。
 この本だけで、水戸学がわかるものではないが、水戸藩の歴史や事情を知らなければ、水戸学は、決して理解できない事が分かる。
 それに、光圀が水戸学で、南朝を正統としたのは、「南朝に仕えた新田義貞の支族である世良多氏の子孫」と徳川家がしていたために、南朝遺臣の子孫である徳川氏が政権を執ることの正当性を主張するために、唱えたのではないかという著者の指摘は、参考になった。発端は、自己否定からではなく、儒教的に徳川政権の正統性を訴える為に、光圀が唱えたという説明は、納得しやすい。
 あと、水戸学が後世に与えた影響を考えると、水戸の歴史をもっと知っておくべきなのではないかと考えさせられた。