インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

北方領土問題―4でも0でも、2でもなく (中公新書)

価格: ¥882
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
Amazon.co.jpで確認
中露国境問題解決の北方領土問題への適用 ★★★★☆
「北方領土問題」が半世紀以上に渉って未解決なまま既成事実のみが堆積していく現状を省みると、本書で提起されているアプローチは、他の方々のレビューにもあるように、現実的で全うな解決策のように思われます。
ただ、著者は自身「私の専門は中ロの国境問題である」と述べているように、本書の前半のT部は中国とロシア〜ソ連が、19世紀に端を発し長年紛争の種になって来た両国の国境問題をどのように解決しえたのかという問題についての記述が中心であり、「北方領土問題」については全く触れられていません。
タイトルに惹かれた方は、一応注意されたほうが良いかと思います。
核心部分は第七章 ★★★★★
四島返還論再考だと思います。
ロシア政府を不審な目で見るのは極めて容易ですが、「三島引き渡しによる最終決着」を
我々国民が受け入れられるかどうかが最も重要な鍵である、と著者は述べておられます。
私もまったく同意見であり、早期に北方領土問題を解決するには
細心の注意を保ちながらも相手国を信頼し、とくに我が方の凡庸な政治家諸氏が
不逞の輩からのあらゆる妨害工作を跳ねのけることができるほどの強い世論の後押しが
何より重要なことである、という感を新たにしました。
もちろん、妥協による返還が国益にならないとの冷静な意見も当然あるでしょう。
肝心なのはP199で著者が述べられているとおり、『惰性による「思考停止」に陥り、
これまでの四島返還論をまるで念仏のように繰り返すことだけはもうやめよう』この主張は
まさにそのとおりだと思います。
早期の国境策定(もちろん竹島問題も)は、やはり利益の方が大きいと私は考えます。
なにより、硬直化した意見や世論が国益に反することも大いにあるのだ、ということを
この本に教えて頂きました。
問題解決のための渾身の提言 ★★★★☆
未だ解決を見ない北方領土問題であるが、人々の関心も薄れ、50年未解決であった問題をさらに先送りしよう、との声も聴かれる。

そんな中、中ロ国境問題を長く見てきた研究者たる筆者は、かの問題が完全に解決されたことを見た。そこで、この解決方式が北方領土問題にも適用できると確信し、この係争地を分け合う方式を援用して、「2+α」の形で、どちらも歩み寄る事を強く提言している。

さて、この筆者渾身の提言は、交渉当事者たる政府外務省に届くだろうか。はなはだ心もとないが、それでも世論の後押しが欲しいところだ。この後押しのためにも、本書が広く読まれることを期待したい。

なお、記載の地図(特に中ロ国境)が非常に細かく、老眼にはちと厳しかったことを申し添えておく。
実直かつ誠実、それでいてパッションゆたか ★★★★☆
いまだ解決をみない北方領土問題を、中ロの国境問題の劇的解決といった
「事件」から考えるアクロバットな一作。(佐藤優の著作に、著者の名前
は登場する。インテリジェンスの方からも無視しえないだけの人?)

彼は、50−50の解決、すなわち四島のうち二島を日本が取ることを前提とし、
その後の「プラスα」の利益をめぐって交渉ゲームを進めろと提唱する。

日本ではきわめて「マージナル」な中ロ国境問題と、「マージナル」な存在で
ある根室市民の声に言及しながら、きわめて現実的に、着実に国益を確保しよう
とする「国士」――彼は、抑制的なナショナリズムの体現者だ。

言外に彼が責めるのは、四島返還を頑なに狂信し、その「善」を信じて疑わない
「中央」の世論であり、「国士」を自称するナショナリストや右翼である。
北方領土問題が、自己にとってなんら利害関係がない人たちだ。

だからこそ彼らは、「幻想」(四島返還)をいつまでも信じていられる。

日本の読者にはなじみの薄い中ロ国境問題を、ボディの部分で実直な筆致で詳説
しており、なるほど、たしかに読むのにくたびれる。

けれど全体を通して、誠実な知が、今日的な問題に処方箋を呈示しようという姿勢
には心を打たれる。いつだって「マージナル」な存在を忘れていない点もまた爽やか。

ところで、かの鈴木宗男と佐藤優は、「二島返還」の権化とされ、メディアで「国賊」
として扱われ、さながらサンドバックと化した。

本当の「国賊」は、はて、誰なのだろう。そんな点に思いを巡らすことのできる希書。

☆大佛次郎論壇賞受賞(→『朝日新聞』朝・夕刊、2006年12月13日に記事)
一番怖いのは「問題の風化」 ★★★★★
本書の著者は、中国とロシアの国際関係の専門家。
この両国の国境問題の研究をベースに、北方領土問題が語られる。
それだけに、原理原則や感情論ばかりが唱えられがちなこの問題についての、地に足のついた論となっている。

第1部は、中ロの領土問題解決のプロセスについて。
現実には、ここで達成されたような「フィフティ・フィフティ」をそのまま日本に持ってくることは難しいだろうが、日本のそれと照らし合わせて考えざるを得ない、非常に興味深い内容だ。

第2部の北方領土問題について言えば、直接の利害関係者(旧島民や、根室など北海道東部の在住者)の方が、むしろ現実的な解決策を待ち望んでいるという調査結果が印象的だった。

この北方領土問題について、一番恐ろしいのは「風化」だろう。
原理原則や感情論に縛られていつまでも解決を先送りすることで、益を得るのはどう考えてもロシア側である。

著者の意図に賛成だろうが反対だろうが、こういったエキサイティングな提言がどんどん出てくることで、問題を解決しなければという世論がどんどん沸きあがっていって欲しい。