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親米と反米―戦後日本の政治的無意識 (岩波新書)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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すばらしい ★★★★★
日本にとって他者であったアメリカが、その暴力性を隠蔽しながら、日本に内在化していく過程をあざやかに浮かび上がらせている。分析対象となる諸表象もバラエティーに富んで賑やか(基地、娼婦、ジャズ、プロレス、六本木、天皇、電化製品、広告、住宅、べ平連などなど、何から何までという感じだ)。時々読むのに少々くたびれる部分もあるが、リターンは大きいと思う。つまらない新書が氾濫する一方で、本書は堅気で良質で充実した一書となっている。「アメリカ的なものを抜きにして日本は考えられなくなっているなあ」という気分をお持ちの方が、何か考えてみるきっかけに読む本として、特にお勧めできる。ちなみに、226頁からラストまでの記述は、本書のほぼ完全な要約となっているので、そこから読んで見取り図とするのも手かも。
アメリカとは日本にとって何だったのか? ★★★☆☆
文章が難しい点は否めないが、日米の関係を時代を追って解説してくれていたため日本史に疎い自分にもよく理解できた。
筆者のマッカッサーに対する分析の視点は斬新だった。
要は「父」の話 ★★★☆☆
不勉強なもので、この本を読むまで知らなかった。イラク戦争時、日本国民は世界で例外的と
いっていいぐらいアメリカに好意的だったということを。そこには当時の首相があの戦争に賛
成の立場に立っていた、というバイアスも捨てきれないが、首相がどういおうと反米といった
ら反米という人がいてもおかしくないし(現に同じ調査においてイギリスではアメリカ不支持
が多数派)、当時トップが小泉でなかったとしてもブッシュ政権の政策には賛同したことが想像
でき、またそれが想像に難くないほど戦後60年を超えてもなお日本がアメリカの精神的属国で
あることを鑑みれば、その点はさして重要ではないのかもしれない。

本書は、世界的な趨勢として反米意識が存在するとともに、同時的に、世界でも例外的に親米
的でもある、という特異な日本の構造的問題にメスを入れる一種の日本文化論。

勘の良い人はすでに気づかれているかもしれないが、本書タイトルの「親米」と「反米」とは
つまり愛と憎と対応するものである(あっ、副題にたんと「無意識」ってあるわ)。筆者が論
ずるのはずばり、アメリカという「父」に対して日本という「子」が、「超えたい」「負かしたい」
という憎しみの意識とともに、文化的、社会的な同一化すべき理想として憧れをも抱いており、
そのアンビバレントに揺れ動いていた、という開国以来の日米関係史である。

国家などのマス的な状況を、社会学者が「俗流精神分析」で快刀乱麻に論じ挙げることについて、
批判的な意見も少なくない(ジジェクに依拠する大澤真幸しかり)。しかし、ときにマスはマス
として乱暴にでも取り扱わないかぎりブレークスルーできない場面も当然にある。冒頭で挙げた
奇妙なほどの親米意識は、そうでもしないと説明がつかない。

戦後復興期のマッカーサー元帥の奇妙なポジショニングなど興味深い論考が並ぶ、日本の「ア
メリカ受容史」。
文章の上手さに騙されそうになるが、やっぱり内容空疎 ★☆☆☆☆
 一読した印象としては、小熊英二が『〈民主〉と〈愛国〉』でやったことを〈親米〉と〈反米〉について試みた内容、かな。
 ただ小熊の場合、〈民主〉と〈愛国〉の概念の変遷を示すために具体的な言論人の経歴や作品の分析を土台に出来た。ところが本書の場合、2つの水準で困難が生じる。
 まず〈親米〉〈反米〉という概念は、思想的立場として直接に表明されるというより、自他のさまざまな発言や行動を特徴づけ分類するための、いわば「レッテル」だという点。ここに恣意性が混入する余地がある。しかもこの「レッテル」が貼られる相手というのが、小熊の場合のように個々の思想家等ではなく、「日本人」とか「社会」とか「男性」とか、いずれにせよ茫漠とした「主体」だという問題があり、ここにも恣意性がある。つまり本書の企図自体に、致命的な欠陥がある。
 この核心部の欠陥の故だろう、私の勘では著者は本書の執筆中、ついに筆が自ずと動き出す瞬間を体験することはなかったのではないか。恐らくほとんど二次資料・三次資料に基づいた多様な「事実」を、「政治的無意識」とか「審級」とか「再想像」とか「再想起」とか「表象の編成」とか「主体の構築」とか「音楽=身体」とか、それらしい現代思想用語を散りばめたカルスタ的ご託宣で縫い合わせただけで、記述にドライヴ感が欠けている。文章が上手いので縫い目が目立たないのも確かだが、終章の結語なんて何が言いたいのか意味不明。
 こういうゴマカシに欺かれてはいけない。
「アメリカ」を軸にした近代日本論 ★★★★★
副題まで読まないと誤解しそうになるのだが、これは「日本」論の本であって「アメリカ」論の本ではない。近現代の日本において「アメリカ」がどのような意味を持ち、そのような存在であったのか、という切り口から論じられた「日本」論であるから、他の期待を持ちながら本書を手に取った読み手にとっては、いささか肩透かしになるかも知れない。

内容的には、近現代日本社会に興味を持つ者であれば一読の価値のある分析が詰まっている。そういう意味では評者としても他人に薦められる本である。

ただ、カルチュラルスタディーズで知られた著者ならではの小難しい言い回しについては、「もう少し別の言い方もできように…」と思わないではない。とは言え、その他の部分にも本書の価値はあると思うので、訳わからんところは適当に流しつつ読んでも構わないだろう。必要であれば後で読み返せばいいだけのことである。