同じ切り口も多いけど買いの本です
★★★★☆
タイトルは、強烈ですが、いつものジジェク節が仮想(ヴァーチャル)資本主義について炸裂しています。ジジェクの特別な文庫本というのも企画としてはありがたい。
内容もさることながら、訳が名訳というか、超訳というか?、ルビなどに工夫があって、そこに爆笑してしまったところが数々ありました。投機(しべん)とか、誰何(インターペラシオン)とか、軍艦(くろふね)前者はわかるけど、後者二つなどは、もう技や芸なのかやりすぎなのかわからない。。
ジジェクは、自分を鳥の穀物と思う男の話や、例によって使いまわしているネタも多い。
しかし、なんだか類推に力があって、これまた例によって読ませてしまいます。
元が執筆された2007年と、いまの世界経済情勢は(とくにヨーロッパも)大きく違うため、このような、ジジェクの最新に近い筆が、ハンディに読めるのはありがたいと思いました。
敵は帝国や資本に非ず!!!
★★★★☆
相変わらず元気なジジェク節全開だ!
新旧リベラリズムへの幻想を一縷すらも抱かない/忌避するジジェクの危険なリアリズムは、いま最もラジカルな<サヨク>であることの証明であろう。
革命へのシュプレヒコールのみで革命を忌避する者、暴力抜きの革命、社民主義、さらには民主主義すら敵だという。
民主主義すら対象とする闘いはアラン・バディウに拠っており、「反資本主義闘争を民主主義的形態を以って遂行することの可能性を信じ込む」ような柔なリベラル左派ども、彼らこそが「資本主義そのものに対する根源的な問い掛けを妨げる」。
このラジカルさは、議会制民主義下の選挙活動に汲々する既存左派政党には微塵もないものである。当たり前だ。
本書にはそうしたジジェクの唆しめいた熱気があるが、結構読みづらい。訳者は解説不要としているが、評者のレベルではなかなか辛いものがある。うねるような文体とともに、次から次へと繰り出される理論的比喩(?)、用語なども理解しがたいところがある。勉強不足と言われればそれまでであるが、特にレヴィナスへの否定的な見解に絡むところなど。
なお、本書でもメルヴィルの小説『バートルビー』が取り上げられている。アガンベンや辺見庸、ビラ=マタスの小説『バートルビーと仲間たち」まで、ようようこの世界文学史上の異形のキャラクターが表舞台に登場してきたのだ。誠に悦ばしい。
万邦の賃金労働者はメルヴィルの『バートルビー』を読むべし!!!