stasiが集めていた自分の記録
★★★★☆
著者は東欧の崩壊についてのいくつもの著作で知られていますが、この著書は、ドイツ統一後に、彼自身について東ドイツの情報組織、stasiが集めていたファイルの行方を求めたルポルタージュです。そこには、言うまでもなく、彼の軌跡が歴史的に事細かに記されていました。もっとも著者自身は、外国人であるためそれほど直接的なかかわりをstasiと持ったわけであはありません。彼自身は、ユーモラスな感覚で、この記録により、丹念に彼の1980年代前半の東独とのかかわりをもう一度再体験することになります。つまり人間関係のその動機からの再構成です。最後に彼が捜し求めた人物との邂逅を描写する著者の筆致は、抑制が効いていますが、この東ドイツという体制のグロテスクさとその巨大な無駄を逆説的に浮かび上がらせます。映画”グッバイ・レーニン”と一緒に読んでください。