と、障害の多い本書ですが、それを乗り越える価値は十分に持っています。
一人の人間としてのアメリカ大統領が身近に迫ってきます。
また、アメリカ政治における政治任用というものの凄さにも
感嘆させられます。
個人的人脈によって大統領側近が形作られていくわけですから。
それにしても、このボリュームでこの値段。
絶対買いです。
本書は単なる政治家の自慢書ではない。自分の父親が母親と結婚する前にも結婚していたこと▼そして、実父は自分が生まれる前に亡くなったこと▼継父も酒を飲むと家族にピストルを向けるような弱さがあったこと▼軍隊の検査を受けたら、斜視でパイロットはダメ。しかも耳も悪かったこと▼知事選2期目に落選したことなど、普通なら隠しておきたい話を、実名入りで書いている。
特に読み応えがあるのはヒラリーとの出会い、ヒラリーがいかに重要であったかで、これほどの深いつきあいだったことは、多くの人は知らないはず。
単なる回想録ではなく、アメリカ現代政治史として楽しめる。ジミー・カーターとは、カーターが大統領になる前からの知り合いだったことなど、面白い記述が多い。
また、自分が大統領になる前に知り合い、立派だと思った人物を、大統領就任後、海外の大使など重要ポストに任命しているのも、日本と全然違って興味深い。
本書で欠点があるとしたら、「上下2巻ある」ことと「2巻あるくせに重く、通勤カバンに入れるにはつらいサイズである」ということぐらい。アメリカに少しでも興味がある人は、ぜひ読んでほしい。