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吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)

価格: ¥578
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「吉野葛」が素晴らしい。 ★★★★☆
奈良・京都などの旅についてつづられた文学を読みあさっているときに出会った1冊。

「吉野葛」の、「私が吉野の山奥に遊んだのは、すでに二十年前…」という書き出しに惹かれた。明治の末か大正の初めだと言う。今では全く違った光景になってしまっているだろう彼の地について読んでみたくて、早速購入した。まだ自分が20代の頃だ。ともかく読後感がいい。今も愛読書となっている。

一緒に載っている「盲目物語」は、正直、自分にとってはとても読みにくい文体だ。文章が長いのに語り口調で、しかもひらがなが多いことが原因だ。戦国時代を生きた人間の喜怒哀楽を描き出したという内容は興味が持てるのだが、読み通すには忍耐がいる。
魅惑のストーリー、魅惑の文体 ★★★★★
 他のレビュアーさんも仰っているが自分も谷崎作品では「蓼食う虫」以降の歴史に範をとった作品がなんと言ってもよく、ここに収められた「盲目物語」はとても大好きだ。また、よく知られているように谷崎は後年の評者が「フォルマリスト」と言ったほど文体に凝った人のようで、いろいろ読むと作品ごとに文体を変え、人物や風景、出来事の距離間隔を微妙に調整しているのが見えてきて、話の構成の巧みさもあいまって読むごとに面白い。ここに収録している作品で言えば、「盲目物語」は文体の美しさ、「吉野葛」は話の構成の巧みさで魅惑される小説だ。

 谷崎潤一郎の文体は、「春琴抄」以降どんな作品でも読んでいて気持ちがいい。個人的には、よく比較される永井荷風にはこれほどの気持ちよさは感じられず、川端康成の文体は気味が悪く、三島由紀夫も苦手だ。それは結局は生理的な好みだと思うが、何か、女性礼賛のような作品を多く残しながら、女性に対してとても冷静な視線を感じる。と言うか、女性に対してのみに留まらない、どこか憂鬱な厳しさがあって、心に引っかかる。

 曰く言いがたくて印象的な物言いになってしまうが、それぐらい心に来る作品二編。
谷崎の別な側面 ★★★★☆
大正期の短編集をたくさん読む中で、一つ昭和初期(両者共に昭和6年発表)の作品を読んでみました。もうここには奇異をてらったおどろおどろしい大正期の作品の風景や人間像や背景はありません。どちらも美しい過去の人間像の描写が中心となります。前半は吉野を舞台とした随筆という形でその人間と舞台が描かれます。もっとも舞台は明治の末年か大正初期の時期と仮定されています。その当時の吉野の奥は交通が不便で、その有様がこの作品の中でも描かれています。ストーリーはこの旅にも同行した作者の友人の育ちの跡をたどる形で展開されます。そしてその育ちの謎と軌跡はこの吉野の山奥へとつながっていたというわけです。最後は谷崎には珍しく読者を裏切ることなく締めくくられます。もう一つの盲目物語は、谷崎お得意の歴史物ですが、話は盲目の按摩師が自分のこれまでの一生を、按摩をしながら客に伝えるという形式を取っています。この語りという形式によって、近江を舞台とした有名なお市の方の一生が語られます。この文体は谷崎独特のやわらかいもので、この文体が信長、秀吉、勝家、長政などの戦国武将との関わりの中でのお市の方の生涯の悲劇を逆に浮かび上がらせます。追記:谷崎はこの新潮社の文庫で読むのが、お勧めです。どれも、詳細な註が巻末についており、谷崎の作品の中でも重要な役割を演ずるディテールについての最低限の知識の一助となります。
語り口調で新鮮 ★★★★☆
これまで織田信長周辺人物を描いた作品は多くあるが弥市という盲目人を通じて、語り口調でお市の側人という視点で描かれており、語られている人物に対する評価はこれまでのものとそれほど変わらないが描写がとても新鮮であった。
文学につかろう! ★★★★★
実際に私は吉野へ行ったことがないのだけれど、『吉野葛』を読んでいると吉野の美しい秋が眼前にきらきらと輝いて見えてくる作品です。この本を読んで、ものすごく吉野へ出かけてみたくなりました。派手な作品ではないのだけれど、しっとりとしていて何度も読み直し、長く味わいたいと思える内容です。
『盲目物語』は特に私のお気に入りで、信長の妹、お市の方に寄り添うようにしてついていた盲目の按摩師を通して戦国時代の不条理を、女性の観点から描いた作品になっています。谷崎潤一郎は不幸な中に身をおかれた女の心の葛藤を、どうしてこんなにも細やかに描くことができるのだろうかと彼が生きていたなら是非尋ねてみたいのです。また、男性(按摩師)から見たお市の美しく、愛おしく感じられる点も当然のことながら描写されていてみずみずしい。按摩師の語りによる物語なのでとても読みやすく、感情移入もしやすいと思います。