昭和の御代、動乱のきざし
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彼の人は25歳。昭和の幕開けは12月25日、元年はわずか1週間だった。国家大権のほとんどを総攬する責任を負った。半年も経たないうちに起きた金融恐慌を乗り越え、田中内閣への不満など政治への批判があった。摂政時代から明言していた後宮(女官)制度の改革、張作霖爆殺事件を経て、神ながらの道を継承する。田中総理へ「辞表を出してはどうか」の問責、陛下の逆鱗に触れる。昭和4年ついに総辞職。
皇嗣なき天皇には内親王誕生が続いた。懊悩の日々浜口雄幸狙撃。三月事件。満州事変。十月事件。血盟団事件。若き天皇は、自身の誠実さと善良さだけを武器に、国を治めなければならなかった。この善良なる君主は、田中義一をはじめとする、多くの家臣と致命的な対立を経験することで、新時代を開くことになる。
即位直後から国内外の不穏な事件の数々に直面する若き天皇裕仁。「彼の人」とその時代を描き尽くす著者のライフワーク、第三部。