音色の甘さと艶やかさ 半世紀の年の差と音楽歴を越えた演奏
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ジャズ・ヴァイオリニストの第1人者だったステファン・グラッペリと、古澤巌とがお互いの音楽性を尊重し、慈しみながら演奏した珠玉の4曲が収録してあります。ヴァイオリンを通して、気持ちの通い合いが伝わってきます。音楽が寄り添い、芳醇な香りを漂わせながらステキなジャズが流れているという至福の一時を感じ取れるアルバムでした。
1996年8月収録時、グラッペリは実に88歳、古澤は37歳、年齢やキャリアは半世紀の隔てがありますが、音楽の感性は親和性を持ち、互いが伝えたい音楽のキャッチボールが収録曲から感じられます。20分、4曲という短い収録時間だからこそ、余計にこのアルバムの1曲1曲の価値が高まっており、歴史的なセッションという意味合いは十分にあるのです。年の差を越えてジャズを愛してきた二人の思いの結実を聴くことができるでしょう。収録の1年後にグラッペリが鬼籍に入ることを思えば、よくぞアルバムに残してもらっていたなという感慨が浮かびます。
ジャズ・テイストですが実に上品で、音楽のジャンルを超えて愛される要素がふんだんに織り込まれています。2人の掛け合いも見事で丁々発止ともいえる音の会話が交わされているようでした。有名なスタンダード・ナンバーを取り上げており、エスプリの効いた古き良き香りを残しながら演奏しているのが、リスナーには心地よく響きます。スウィングするというのはこういうことだ、という見本のような軽やかさで、見事の一言です。そこにはただ自分達の愛する音楽を演奏できる喜びが存在しており、慈しむように互いを思いやっていました。
アルバム・タイトルとなった「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」での郷愁を誘うメロディと囁くような弱音の美しさ、時には雄弁に語りかけ、甘美な雰囲気を漂わせながら2人の魅力を如何無く発揮しています。音色の艶やかさは魅力的で、奏でられる音楽は優雅な響きとスウィング感に満ちていました。まさしく絶品です。
こんなにも 尊敬と優しさが表れるなんて
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ジャズヴァイオリンの巨匠に留まらず全てのヴァイオリン界においての巨匠といっても、とがめられないだろう,今は亡きグラッペリ氏。
デュエットがCD化されるなんて、
きっと,古澤氏は、とんでもなくみんなから羨ましがられたでしょうね。
痛いほどの尊敬と優しさが溢れています。
こんなにも お互いを大切にしていることが、こうして音に表れるものなのだということを、
再認識しました。
やさしい音が聞けるCDです
★★★★★
一曲目がいいです!朝が舞い降りてくるような軽やかな曲ですね。寝起きの悪い彼女がいたら聞かせてあげたいような曲です。奏者が80歳を越える方だとは聞いている限りではわかりません。それぐらいに一曲一曲が活き活きした音でつづられていると思います。4曲しかないのが残念なくらいです。こんな演奏をもっともっと聴いてみたいです。
グラッペリのラスト・レコーディング
★★★★☆
グラッペリのラスト・レコーディング・アルバムです。バック・メンバーはMarc Fosset(G), Jean Philippe(B)といつもの顔ぶれです。古澤がグラッペリの体の調子を気遣い録音されたものとのことで、各曲きちんと計算された内容で、曲も4曲しかありません。また、古澤が敬意を払いながら弾いている様子がよく伝わってきます。
晩年に至ってますます軽快になってきたグラッペリの軽く舞うような音色はここでも健在です。古澤との違いがはっきりと分かります。新旧の時代の交代を想わせる名盤です。
これぞ最高の1枚!
★★★★★
このCDでは、古澤巌、そしてジャズ界の巨匠であった故ステファン・グラッペリが共演しているのですが、ここでも古澤巌の実力が存分に発揮されています。巨匠の演奏と見事に溶け合い、一歩も譲りません。その、古澤巌の、誰を相手にしても引かない強さがお互いの音色を最高に引き出しているのです。まさに、「時が経つままに」というタイトルを表す、甘く切ない、素晴らしい演奏がここの中に収録されています。この1枚はぜひお聞きになることをお勧めします!