読書法の 古典と言えば この一冊
★★★★★
1.内容
昭和16年ごろに書かれたもので、苦労して学問を身につけた著者が、その経験、ならびに結構な量の引用を用いて、どのように読書すべきかを説いた本。選択、読み方、図書館の利用法、状況別の読書法、新聞や雑誌の読み方など、内容は多岐にわたる。
2.評価
若干古い面もあるが、星を減らすほどでもなく(大概古い本は現在に応用できない部分が多いものだが、この本に関してはほとんど感じなかったので)、想定しうる状況が、コンパクトな(文庫なので)わりには網羅されており、役に立つと思われるので、星5つ。読書法の古典として、今後も読まれるべき本である。
つぎの読書論を読みたくなる
★★★★☆
一途で朴訥な学者によるストレートな読書論。インプット寄りの読書観が基本にあり、アウトプットを前提とした読書という観点はほとんどないのは時代的な制約だと思うし、今の目からみたら内容面ですごく新しいことがあるわけではない。だがそれでも、古今東西の読書論を渉猟した著者による豊富な引用は読み応えがあり、なおかつ有益だ。自分の読書実践と照らし合わせて自分の方法論を省みるによい本になると思う。
個人的には阿部次郎と新渡戸稲造などの意見に興味を持った。「読書の意義を考える者は、先ずその価値の限界を考えなければならない」とし、読書より生活優位をとくのが阿部次郎。標準とする最良書について精読で極めてから、他の書はそれへの参考として読みなさい、たとえば論語を標準書と定めたとすれば、スペンサーでもミルでも、総て論語の参考として読むようにするのがよいとするのが新渡戸稲造。
本書を読めば次に読んでみたい読書論にもきっと出会うだろう。
珠玉の人生と読書
★★★★★
ビブリオ・マニアを超えたフィロビブロンと紀田順一郎氏が賞賛を惜しまないが、著書を読んでみると、それ以上の素晴らしい人物である。
小学校卒で国鉄の給仕として働き、苦学の末に山形大学の教授になり、岩波英和辞典を編纂された方である。文字通り本を味読し、それらを自分の血肉に変えて英語学者になっただけではなく、その知識を学問の啓蒙に人生を費やすというのは並大抵では出来ない。
本編で紹介される著書は古書店でないと手に入らない本もあるかもしれない。古典も含まれている。だが本は時代を超えて評価されるものである。今のようにネットで簡単に手に入る時代とは違い、当時は入手も大変であったろう。本を味わい、楽しみながら、そして本を愛する著者こそ、本当のビブリオマニアであろう。
著者の真摯な学問の態度に、只恐れ入るだけである。
滋味溢れる独特の文体
★★★★☆
『現代読書法』というタイトルにも関わらず。結構古臭い内容。でも筆者の学問・書物に対する深い情熱と苦労を重ねてきた人生経験から滲み出してくるようなアドバイスは、その一種独特の文体リズムと相まって、至福の読書体験となろう。書物名を付した具体論が多く、高踏的な所は殆ど無いが、やや真面目過ぎるのと、引用が多過ぎるのが☆一つマイナスの理由。