構成が悪く、書籍としてはつまらない
★★☆☆☆
「モハメドアリその闘いのすべて」を読みマルコムXに興味を持ち、マルコム関連の書籍の中から本書を選んで購入してみたが結果選択は失敗したと思う。
まず全体の構成が悪い。
中途半端な時系列での記述で、用語の説明のタイミングも悪く、加えて全体を通す視点の核もない。
そのため本書を読んでも何の感慨もわかず、ページをめくる楽しさもなく、マルコムXの断片的な言動が解るというのみで、学校の歴史の教科書をペラペラ流し読みをしている時と似た感覚。
心の変化を時系列で深く考察したり、もしくはある特定の事件を核に掘り下げる事は行われず、白人に憧れていた犯罪者マルコムXがどのような心の変化・葛藤の過程を経てネイションオブイスラムに心酔していき最終的には決別し新たな境地に達っしたのかが全く伝わってこず人間描写が非常に薄っぺらい。
単純な自分が知ってるマルコムネタ話をつなげたような構成で内容に魅力がない。
読み終わったら、必ずもう一冊別のマルコムXの本を買うことになる。
それを覚悟で購入すべき本・・・と言うか、だったら最初から違う本を買った方が良いか・・・。
もっと明解に!
★★☆☆☆
今までに日本語の文献ではあまり知られていない内容が盛り込まれており有難いのだが、記述の仕方がこなれていないのが問題。
例えばマルティン・ルーサー・キング・ジュニアというのが頻出するがマルティン・ルーサー・キングかキング牧師(私は後者を推奨したい)で充分ではなかろうか。
もっと問題は、全体の記述・構成が起承転結になっておらず、大変読み難い。
もう1点は、引用の注で文献をどう参照していいのか全く分からない。不親切としか言いようがない。
編集の方、しっかりして下さい。
マルコムXの位置づけ
★★★★☆
本書は、マルコムXについての詳細かつ平易な伝記である。マルコムの生涯を概観したい読者には、大変読みやすく、それなりに詳しくて便利な一冊であり、お勧めすることができる。この点、黒人文学に精通した著者の力量が存分に発揮されていると思われる。
しかし本書には、若干の疑問も抱かされる。1つは、マルコムと対比される形で言及されるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアへの評価。「公民権運動を代表する指導者、『私には夢がある』の偉人、アメリカの理想の体現者」という一般的な評価に対し、本書はマルコムXによる人権論の先鋭さと対比させたキングの穏健性や保守性、主流派・体制への妥協者としてのキングという像を暗に示している。だが近年の公民権運動史研究やキング研究は、むしろ一般的評価に示されるような平均的アメリカ人(そして日本人)のキング・イメージによってぼかされてしまった、「ラディカルなキング」を再発見している。このことは、キングと対比されて語られがちなマルコムをどう評価するか、という点にも密接にかかわってくる以上、どうしても気になってしまう。
これに関連した疑問点として、もう1つ、本書ではマルコムX以外に関する公民権運動史研究や黒人史の近年の成果に、あまり言及がないことも気になる。グローバルな視点を持ち行動した活動家はマルコムXだけではない(ノースカロライナからキューバ、中国までも股にかけたロバート・F・ウィリアムズや、ガーナに希望を見出して移住した数多くのアフリカ系アメリカ知識人・活動家たち)。また近年、公民権闘争を支えた前政治的な草の根の黒人民衆ネットワークやコミュニティの形成への着目、あるいは、そうしたコミュニティがいつどのようにして政治化され、公民権闘争に身を投じえたのかを探究する研究が多い。それらの研究は、公民権運動の「偉人」たちへの称賛とは一線を画している。
アメリカ(黒人)史研究の文脈に位置づけることなしにマルコムを論じることで、本書には、マルコムXを神格化とまでいかずとも脱文脈化させることによって彼の卓越性を評価する叙述になっている部分があるのではないか、とも感じさせる。
とはいえ、本書がマルコムXを考えるための格好の入門書であることは疑いようもない。
読みやすく重厚な内容です。
★★★★★
「いまさら、マルコムX?」と思いながら、なんとなく読んでみましたが、著者独自の調査・研究や最新資料(FBI内部資料など)をもちいて平易に書かれており、引き込まれました。マルコムXの生い立ちから、その現代的な意義まで、現代史家の視点からの叙述はバランスもとれています。マルコムXの思想や黒人解放運動でのスタンスは、21世紀になっても学ぶべきところが多々あると痛感しました。オバマ以降のアメリカ社会について、深く考えていくためには、本書のような研究を参照することが不可欠でしょう。