どちらかというと理論系の学生向け
★★★★☆
薄い本ですが扱っている話題は豊富で読み応えがあります。物理的解釈よりも理論式を導出すること自体に重きをおいているので、どちらかというと理論系の学生向けのように思います。複雑な計算が多いので、式の導出を確認する作業は労力が要りました。Dirac方程式やその応用(様々なケースが扱われています)について知りたい方には数少ない貴重なテキストだと思います。
中程度の良書
★★★★★
本書は相対論的量子力学の標準的な教科書で内容は中程度だと思います。場の理論を勉強するには相対論的量子力学は学んでおかなければなりません。場の理論の最近の教科書に場の量子論:坂井(ショウカ房)があります。新物理学シリーズは良書が多く山内先生監修でなかなか良書ぞろいのいいシリーズです。現在絶版本もぼつぼつ出始めていますが出版社はこういう良書は出版を維持する努力を惜しむべきではありません。
この分野の優れた名著
★★★★★
この本は量子力学を学び終えて、場の量子論へ挑戦する前に読むといいと思う。内容的には1章でディラック方程式を導入し、その物理的意味が議論され、2章で電磁場の量子論を導入し、3章で展開する。そして4章で散乱理論について詳しく議論されている。また、無限自由度を扱う量子論の必要性を明確にするために基本的には場の量子化は行っていないが、電磁場に関しては例外的に量子化されている。
個人的には量子力学と場の量子論を橋渡しする本としてはこの上ないと思う。自分もそうであったように、量子力学からすぐに場の量子論学び始めると、この分野はおろそかになる傾向が世界的に強いと思う。しかし、遠回りに見えるかも知れないが、この本を読んでから場の量子論を学び始めることは実に有益であり、ここでつけた知識のおかげで、結果的に最短経路で場の量子論をある程度理解することができると思う。
その後、同じ著者の場の理論(紀伊国屋数学叢書,1987)を読むことで場の量子論の体系を学べばよいだろう。