例えばヘラクレイトスは、教科書などでは「万物の根源を火とした人」程度にしか思われていないが、以下の箴言の如き断片を読めば、彼の思索の本当の深さが伺えるはずだ(ニーチェに深い関心のある人ならヘラクレイトスの断片は必読)。
……同じ川に二度入ることはできない。…それ(可死的な事物)は、離散しふたたび集合し、…近づいて来ては離れ去る。
……私は、自分自身を探究した。
……神にとっては、すべては美しく、善く、正しい。しかし人間は、あるものを不正とみ、他のものを正しいと考えたのだ。
この本の前半部は訳者による解説となっており、この本のメインといえる後半部は「ソクラテス以前の哲学者」達の言葉の断片が収められている。この後半部だけでも星五つの評価に値する内容がある。なので箴言集として後半部のみ読むのもありだし、またそこで興味を持ったら前半の解説を読んでみるのも良いと思う。哲学専攻の人は必読といえるし、そうでなくても少しでも哲学に関心のある人にも是非薦めたい。また、この本の内容に対する入門としては『哲学の原風景』(NHKライブラリー)という本がわかりやすいので、併せてお薦めしたい。