ひとをゆるすということの困難さを描く
★★★★★
キリスト教の信仰、というのがいつもベースにある著者の作品ですが、
この物語も例外ではありません。
主人公は、牧師の父親を持つ、美貌に恵まれた若い女性。
両親の反対を押し切り、自由奔放に、絵画への夢を捨て切れずに生きる
男性と結婚する。
しかし、結婚生活は夫に振り回され、時に暴力を受ける灰色のもの。
自分のかつての同級生と夫が浮気していたことが発覚した直後、夫は
結核を発病する。
しかし、牧師である義父のもとで療養生活を送るうちに、夫の内面に
徐々に変化が生じてくる…
ラストでは、大きな悲劇とともに、人をゆるすということがどんなに困難なことか、
私たちは目に見えるものに惑わされて、本当のひとの姿を
見逃しているのではないかという思いに
気付かされました。
美しい日本語とともに、そんなことを考えさせてくれる秀作です。
愛することとはゆるすこと
★★★★★
30年も前に書かれた小説ですが、今読んでもまったく古さを感じないのは、
この本が人間の本質的なテーマである愛を主題としているからでしょう。
愛することとは、相手を自分の思い通りにすることでも、
単に享楽に耽ることでもなく、相手をどこまでも「ゆるすこと」
ということが本書では、生々しい人間関係を通して描かれています。
「われわれはともすれば、自分を正しい者のように思い、
人を責め、きびしく裁こうといたします。
けれども果たして、神はわれわれ人間に人を裁く権利を
与えておりましょうか。
われわれが神の為にでき得ることは、実は人を責めることではなく、
ただゆるしを乞うことだけではないでしょうか。」
というセリフにはただただ、反省の思いが募りました。
謙虚な気持ちが自然と湧いてくる、そんな一冊です。
人を愛するということ
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作者は信心深いクリスチャンで、この作品もキリスト教の考え方がベースになっているが、実際キリスト教に触れたことのない人でも読みやすいと思う。
人を愛するということがどういうことか。
"人生"や"愛"に対しての見方が変わり、考えさせられる。
心が洗われる、何度でも読み返したい作品であった。
善と悪のパラダイムシフトと聖性の獲得
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酒とお金と女にだらしない男と、厳格なカトリックの牧師を両親に持つ女の話。
物語は中盤から、善と悪、神と悪魔が、すっかり入れ替わり、単なる女狂いの主人公は、最後に神格化される。
浮気がちな現代っ子と、そんな現代っ子の生態を理解しきれない団塊の世代方々と、いずれにせよ人格が神化する過程が顕在化する現実を目撃したことのない者には、衝撃の一冊。
愛とは何か?の本質に迫る傑作!!
★★★★★
人間の心は移ろいやすい・・・。
人間の過ちを仕方のないことだと受け止め、いざ過ちを犯したとき、犯した人がいるとき、それでも人を許すことができますか?という問いを全編に渡って投げかけています。
「愛することは、ゆるすこと」
主人公の人生を通じて、そのゆるすことの意味を伝えていく心揺さぶられる物語。1980年初版で2004年に60刷も納得の時代を超えた恋愛小説であり、愛することの本質に迫る本。
今までここまで「愛」について「過ち」について「ゆるすこと」について繊細に描かれた物語を読んだことがありません。
既婚、未婚、男女問わず読める恋愛小説の傑作。