これからの日本の裁判制度に対する考えが変わるかもしれません
★★★★★
この本は 楡 周平(にれ しゅうへい)さんによって書かれた本です。単行本は2007年3月に出版されていますが、文庫本としては2009年3月に出版されています。
日本では陪審員制度が2009年5月21日に施行されましたので、出版のタイミングとしては良かったのではないかと思います。この本の内容はアメリカではいかにも起こりそうな事件を題材に展開していきます。
気持ちを寄せる少女の養父は彼女を長期間レイプし続けます。それを知った日本人少年は殺人を計画し、実行します。少年の薬物利用による計画的な殺人が有罪になるか、無罪になるか。
時間の経過とともに各々の陪審員の気持ちが揺れ動きます。
同時に読んでいる私の気持ちも見事に陪審員の一人として参加させられていたことに後で気付くことになります。
最終的な司法の判断が正解かどうか、それはわかりません。敢えて言うならば、正解はないのではないかと思います。特にこれからの日本の裁判制度に一石を投じたのではないかと思います。
興味のある方は是非ご一読ください。
すっと読めてしまう一冊です。
内容は甘い
★★★☆☆
が、裁判員制度の参考にはちょうど良いかもしれない。ニューオーリンズ・トライアル/陪審評決を
DVDで合わせて観られると良いかな。
裁判員制度について考える、いいきっかけになる本
★★★☆☆
もうすぐ始まる、裁判員制度にぴったりの話題。
これはアメリカの陪審員制度についてのフィクションのミステリーとなっている。
裁判は、医者の夫婦が子供が出来なくて、養女を取り、表面上はうまく行っていたが、奥さんが外出すると必ず父親からレイプされていた…女の子が、自分の好きな人にその秘密を打ち明ける。その青年が養父の医者を拳銃で撃ち殺してしまい、現行犯で逮捕。最初は黙秘するが、女の子がすべてを話したので実際の裁判では、殺したことについては争われず、その男の子が有罪か無罪か…という事について、検事側の言い分、弁護士側の言い分、陪審員に選ばれた一般市民12人の言い分が書かれている。
日本だと、絶対に有罪で、ただ情状酌量とか、執行猶予とかの「情」的な判決が出るのだが、アメリカは、殺人となると一級か二級の判断で、最低でも25年間の懲役が待ち構えている。この裁判の結論は、有罪か無罪かの判断しか求められず、刑期に関しては決定権がない。
その医師が一番悪いという事は誰もがわかっているのだが、かといって人を殺してい良いのか?
ただ自業自得という事にすると、その青年は人を殺したのに何の咎めもないのか?というやり取りが繰り広げられる。
最初は12名中9名が有罪、2名が無罪、1名が保留という状況から、違った結論に至るまでの議論が大変考えさせられて、もし自分がその場にいたら、どんな事を発言しているのだろう…と考えながら読めるし、もし自分が今後裁判員制度で呼ばれたら…とかいろいろ考えてしまう。
人を裁くのは大変な事で、本当はこんな事件などがない世の中になれば一番いいのだが…。
来る日本の裁判員制度にむけて
★★★★★
固めのタイトルに引きながら、読み始めましたが、一気に読み終わりました。
裁判員制度にすこーしだけ、興味があり、と言うか もし自分に当たったら?どうしようと
いう思いから、少しでもその内容がわかればと思っていましたが、法だけでは、裁けない
情のようなものに、共感しました。軽く考えてはいけない事ですが、10代の恋愛感情とかも書かれていてすごく読みやすいので、制度に関心をもつ、一歩になる本だと思います。
ぜひ、いろいろな世代の方に読んで頂きたい本でした。
陪審制度の一側面
★★★★☆
本書ではそのストリーは単純で淡々と流れていくが、アメリカ社会の特徴のひとつである陪審制度の矛盾点をつく内容に仕上がっている。通常、陪審制度を扱う小説は、本書でも指摘されている通りそのゲーム的要素、つまり陪審員の選考過程や最終弁論での陪審員の関心を買うための法廷戦術を織り込んでくるものが多いが、本書はその点はあっさりとかたずけ、一般市民が裁判に参加することの意味、陪審制度の建前とは異なるが市民参加に期待するものがあるのかという点を主題にしている。
その点では、制度的には異なるが日本で始まる裁判員制度について考えるいい材料を提供している。但し、陪審制度のあり方はさまざまで本書の描く内容はその一面に過ぎず、その点は留意する必要はあると思いますが。