日本のフリードリヒ研究の最先端か
★★★★★
第一部は割と長めのサブタイトル通り、フリードリヒの近代性について論証している。すなわちそれは断片と全体の問題であったり、幾何学的な構図による視覚性や抽象性の問題であったりした。著者は極めて詳細にフリードリヒ作品群を分析している。
しかし、私的にこの本で一番おもしろかったのは、第二部のフリードリヒ再発見と受容の歴史をまとめたものだ。現在著者のもっとも関心のある分野だったと思うが、国家の表象としての美術館をどうとらえていくべきかという問題は大変興味深いものがある。美術と社会の関連が今後の美術史の研究分野として広がっていくものと思うが、その際もまたフリードリヒのような特殊な変遷をたどった画家はおもしろい一例として挙げられていくことだろう。