続きを書いて欲しい。
★★★★☆
無痛。本作家は結構とんがった官僚、神のように振舞う医者をすえた本が多いのだがこれはちょっと違った。続きがまだまだありそうに思う。書いて欲しい。筆者は現役の医者のようだが、実際助かる人はどうしたって(医者がミスさえしなければ)助かるのだろうか。だめな人はどうやってもだめなのだろうか。実際はどうなんだろう。
話がそれた。とにかく読めば大体先は読めてしまうが追い詰めていく過程がなかなか面白い。あまり長くないし、量も多くない。さらっと読める本だから読んでみてもらいたい。
無痛??
★★★☆☆
人の外見を精緻に観察することで、病気を見抜く医師。
超能力でもなんでもなくて、観察力が人並み以上という理由。
この能力を使って事件を解決していくという訳ではないんですが、
所々に良いアクセントとして機能しています。
精神病の施設で働く臨床心理士の女性(高島)も主要な登場人物であり、
その施設に通う少女(メールでしかコミニュケーションを取れない)など、
精神疾患に関する記載が豊富です。
心神喪失の場合には無罪となる刑法39条も絡んできます。
ただ、この物語では、健常者の異常さが際立って表現されています。
高島の元夫の異常性は、精神病患者の異常性など吹き飛ばす恐ろしさです。
高島の部下の女性看護師も、人間として醜悪。
元夫は残忍な方法で殺されますが、読んでいてホッとするくらいです。
恐らく、作者は、精神疾患や神経障害のある者よりも遥かに恐ろしい
存在が、いわゆる健常者と言われている人にいて、その確率も高いということを
メッセージとして伝えたかったのではないでしょうか
他人の痛みと自分の痛み
★★★☆☆
小学生の頃、「信号は青になったら渡りましょう」
なんて教わったが、どう見てもあれは「緑」だと
もしかして周りの人はあれが「青」に見えている?
それとも色彩に関して私に問題が?
しかしそうではなかった
緑は新しい色の名前で青は古くからの名前らしい
そのなごりで緑を含めて「青」と呼ぶらしい
隣の芝生は青い、などもそうである
そんな経験から、他人と自分は同じように
物事を五感で感じているのだろうか、と
この著書では痛感について投げかけられた
また、それとともに刑法39条の
犯罪の責任を問えない人の立場について
犯罪意識などをどう捉えれば良いか
果たして犯罪を犯罪と思える人間から
犯罪意識を持っていない人間のことが理解できるのか
それらについて考えさせられた
余談だが、事件の舞台が、私の小中学校の校区で
土地勘があるため、登場人物の移動を詳しく著者が描いているのが
正確なので、足を運んでじっくりと調べて
リアリティを追求した上ででの
フィックションを作り上げようとした
著者の努力が伺える
その方向性での構成の中で、病院の院長の行動についての意図が
最後まで明かされなかったのが腑に落ちない
医学サスペンスと社会派犯罪小説の融合
★★★★☆
医学サスペンスに分類されるのだろうが内容はなかなか盛りだくさんだ.
無痛症,犯因証,発達障害といった医学的な要素に加え,
刑法第39条,混合診療,ストーカーといった社会的な問題まで複雑に取り込んでいる.
登場人物も多く,場面ごとに掘り下げているテーマも変わっていくため,
話の焦点がぼやけがちな部分も見受けられるが,これだけの内容を丁寧に調べ上げて,
1本の小説に組み込む構想力は大したものである.
サスペンスと社会派犯罪小説の融合とでもいうのだろうか.
個人的には「病気は自然現象だから仕方がない」といったセリフが印象に残った.
作者の医療者としての実感なのか,それとも単なる思いつきなのか?掘り下げて聞いてみたいものである.
私としては十分楽しめた作品だったが,他のレビューではあまり評価が高くない.
この出来でこれだけ酷評されるなら,他の作品はどんなに面白いのだろうと,つい買ってしまいました^^
今後が楽しみな作家だが、本作は良くもなく悪くもなくレベル。
★★★☆☆
久坂部羊の書き下ろし作品です。テーマは刑法39条、心神喪失状態での責任能力の是非についてです。これまでにも多くのミステリーがこのテーマに取り組んできたと思いますが、真っ正面から切り込んでいった作品は実は少ないのではないでしょうか。性悪説や復讐の是非などが同時に語られることが多い中で、本作は犯印象という生来の犯罪者に特有に見られる身体的特徴と39条を結びつけているところがひねりどころです。読ませる筆力も感じますので、これから楽しみな作家さんかもしれません。