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医療におけるそれぞれの正義
★★★★☆
医療ミスを取り上げるジャーナリストと,協力する医師のやり取りから物語は始まる.
医療の構造的な問題を炙り出すという大義目分の下に取材が進められるが,
一方で,記事が面白くなるために,協力する医師の身に圧力がかかったり,
事件に発展したりすることすら期待するジャーナリストの姿が,率直に言って不快である.
中盤からは,ある医療過誤の真相を追う流れと,
高齢化社会への過激な対策を実現するために暗躍する官僚の活動が中心となる.
久坂部氏がモチーフとする題材はいつも現実的で,提示される対策は過剰なまでに過激である.
あらゆる手段で具体的な方策と人的資源を確保し,世論を誘導して施作を実現しようと官僚の姿は,
薄気味悪くもあり,ある種の信念に対する畏怖も感じる.
とはいえ,一官僚や国の省庁のやり方としてはいくらなんでも陰謀史観的にすぎる.
あらゆる事象を国家権力を使えばコントロールできるというのは,非現実的というより,安易な発想のように思える.
医師の良識と過剰な自意識,ジャーナリストの使命感,官僚の理想.
それぞれの立場の正義が対比されつつ下巻の結末へ向かう.
心臓の話かそれとも老人世界の話か、それとも。。。
★★★★☆
うならされられるような話。ただ、ちょっと自己矛盾も含んでいるような気がした。確かに老人が増えてきてそれを支える若者が減っているのは確かだし、小児科が減ってきて老人医療にばかり金がかかるのはおかしいと思っている。まずは小児医療だと思うのだが。医療過誤は確かにきつい。素人ではわからない。玄人だってわからない。と、本書は謡っているように見える。わかっているのは本人だけと言うことなのか。驚くような逸話がいろいろと出ているが医療の現場のいつわざる本音なんだろうと思う。ビデオですべての手術を取り、確認してもらう必要があるのかもしれないと思うとちょっとさびしい気もする。
さて、官僚。なんだかどこかの外務省の役人を思い出してしまった。凄い官僚だ。まぁ、実際いい方向へ動いてくれるのならこれくらいの馬力のある役人がいてもおかしくない。もっと活躍して欲しかった。
医者の仕事は本当に大変だと思う。ただ、私が大学時代、動物実験を繰り返していた時に動物を動物と思わなくなり、慣れてきてただの物のように扱っていたことを思うと医者も気をつけないと人を人とは思わなくなるのだろうと思う。そういう医者がこの本に極端に出ている。医者は人と接していることを大事に考えて欲しい。
そういうことを思わせる一冊だった。
リアルと想像の境が…
★★★★☆
前の「無痛」より、より現実的で、こんな発想の官僚がいたら実際に法律作ってやりそうな気がする。
その発想は「安楽死を積極的に推進する…」というものなのだが、単に楽に殺すのではなく、一度心臓を強くして、普段と同じ生活が出来るようになって、コロッと心臓麻痺で死んでしまう方法なのだ。しかもこの発展型もあり、麻薬を打つことで幸せな幻想を見ながらそのまま死んでいく…というような事も考えられている。
世の中の老人にアンケートとって、「生きるのが辛いので殺してほしい」という声がある程度あるという実データをもとにこのような施策を進めようとするのだが、その背景には崩壊しそうな健康保険を立て直す…などの問題もからんでいて、とてもフィクションとは思えない。
この二つのテーマだけでも面白いのだが、医療ジャーナリズム、薬物問題、医療ミス問題、官僚と議員の微妙な力関係…などもからんできて、話が膨らみのきらいはあるが、一気に読ませてしまう筆力はさすが。しかも途中途中に色っぽい話もあり、その恋はなんと思わぬ方向に…。
ただ真剣に「長生きする」事が医療の目的なのか?という事をマジに考えさせられた。意識がなく点滴などで生かされている人の人間としての尊厳はどうなっているのだろう。ただまったく無反応でも本人の意識ははっきりはしていて、何とか蘇りたい…と悶々としているような人も実際にいるのかもしれないし。
この人のあまりにもリアルな医療現場の描写が、この本のノンフィクションとフィクションの境目をあいまいにしている。
そのあいまいさが私の恐怖心を思いっきり増幅させてしまう。
後期高齢者医療制度。その根幹がここにあります。
★★★★★
現在、65歳以上の老人は人口の20%をこえ、10年後には40%になるといわれています。老人医療により、健康保険制度は崩壊にひんしており、厚生省は老人を切り捨てるために「後期高齢者医療制度」をつくりました。長寿医療制度などど馬鹿なことを言っていますが、75歳以上は健康保険にいれないよ、病院にかかるな、さっさと死んでくれというのが本音でしょう。この作品では政府は積極的に老人を始末するために、心不全を改善するが、短期間で死を迎える薬剤の開発を進めようとします。結局、うまくいきませんが、現実問題として、長寿がもてはやされた時代は終わり、確実にお荷物になってきているのです。長生きは「悪」なのです。口当たりのいいことばかりいって、票集めにしか興味のない政治家や数字合わせにしか興味のない厚生省の役人に任せていると、あなたひとりで老人二人の面倒を見なければならないことになります。年金・医療はもはや崩壊にむけ、転がりだしている状況なのです。
一気に読めます!
★★★★★
医療関係の小説は、白い巨塔をはじめとしてたくさんあるが、この本はとても内容が濃い。文庫版は上下巻あるが、一気に読める。
医療過誤、高齢者問題、安楽死の是非、官僚汚職、薬物問題等々盛りだくさんである。しかし、その盛りだくさんのテーマを見事にエンターテイメントとしても楽しめる内容にまとめ上げている。
この面白さは、ストーリーの展開もさることながら、各登場人物のキャラクターによるところも大きいと思う。いずれも個性派ぞろいであり、かつ物語の展開とともに本性が暴かれていく様が、とても読み応えがあった。
ぜひ、著者のほかの作品も読んでみたくなる一冊だった。