このシリーズは昭和43年から45年にかけて刊行されたロングセラー、角川書店「仏教の思想」の文庫版であり、第1部を専門の仏教学者、第2部を第一部の執筆者と第三部の執筆者である哲学者の対談、第3部が哲学者が書くというサンドイッチ型の構成になっている。
哲学者という客観的な眼が入ることにより、専門の穴にこもってしまいがちな仏教書とひと味違った立体的なものになっているのがこのシリーズが読み継がれてきたゆえんであろう。
本巻は仏教の原点である釈迦を中心とする原始仏教を論ずる。長い間、日本仏教は大乗仏教というフィルターを通して釈迦を見てきた。ところが、大乗仏典は仏陀滅後数百年経って仏陀の名の下にいわば捏造された経典群である。近代仏教学はそのベールをぬぐい去り、実に人間的な仏陀像を示してくれた。本書を手がかりに原始仏教の世界に入っていこう。