本書はそのニーズを安価に、かつコンパクトに満たしてくれる貴重な本である。
第一部「浄土教の誕生と大成」(塚本善隆)では釈尊から説き起こし、インドにおける浄土教の成立、中国への伝搬と受容、慧遠、曇鸞、道綽、善導と説きおこしてゆく。少し残念なのは、祖師たちの人間像、思想のポイントがすっきりと浮かび上がってこないことである。
またインドに紙数を割きすぎて、善導以降の中国浄土教が描かれていないことも残念である。善導と法然の夢の話は非常に印象的であった。
第二部の対談ではキリスト教をはじめとする西方の宗教が浄土教の発生に影響を与えた可能性に関する議論が興味深い。
第三部では梅原氏が羅什にスポットを当てて論考している。面白いことは面白いのだが、憶測に憶測を重ねているので信用はできない。