華厳思想の良い入門書
★★★★☆
本書は『仏教の思想』シリーズであるから、三部に分けてある。
第一部は鎌田茂雄氏が担当されており、その中では華厳思想の成立とその主要概念が解説されている。この中で鎌田氏は荘子と華厳の関係について述べている部分があり、その部分が私にとってはとても参考になった。つまり、その部分の鎌田氏の荘子の「逃避」部分を強調する点は(華厳を論じる上ではしかたのないことかもしれないが)納得できないところであったが、全体として荘子から『亡是非論』、そして華厳という繋がりを知ることが出来た点が参考になったのである。
第二部は対談であるが内容は第一部の主要部分が繰り返し述べられており、第二部から読んだ方がよいかも知れない。
第三部では、上山春平氏が西田哲学を用いて華厳思想を理解することを試みている。
本書の注目される試みは第三部であろうが、私自身が西田哲学があまり好きではないこともあり、華厳思想と西田哲学が関係づけて論じらるものであるかどうかは疑問である。
しかし、少なくとも第二部までは、名前は聞くがあまり触れることのない華厳思想をもっと知りたいと思わせるような良い入門書であると思う。