青春の想い出が甦る
★★★★☆
今でこそ「大河の一滴」、「他力」など仏教思想に彩られた世の悩める人たちへの救済本を書いている著者だが、本書発表の頃はデカダン(死語ですか ?)風のイキな兄貴だった。私は高校生の頃だったので、そんな作者の自由闊達な雰囲気に憧れたものだった。
根無し草で構わないじゃないか、明日は明日の「風が吹く」。気儘に生きようじゃないか、という考え方は魅力的だった。また、そうした態度を許容する雰囲気が世間にもあった。現在のようなグローバル化、競争世界、格差社会等という個人を追い込むムードではなく、各人の個性を尊重する姿勢が。作中に出て来る、「コガネ虫は、虫だ〜」と言う変な替え歌も印象的だった。
本書を読むとそんな昔が甦り、自分が何か知らないけど高い雲の上を歩いているかのような夢心地に浸れる。時は過ぎても、その自由闊達な精神の大切さを味合わせてくれる名作。