料理解説するのと同じやさしい口調で、「日中比較文化」とか「北京食文化の美学」とでも呼びたい領域に軽く目配せを送りつつ、ウーさんは祖母・母・自分と三代に渡って受け継がれてきた良質な北京庶民の生活の智恵と食卓の審美学を分かりやすく丁寧に盛り付けてくれるのです。読んだ食感は実になめらかでも、その味わいの奥深さに驚かされることでしょう。極上の“口福”エッセイ&レシピ。すこしも偉ぶることのない中国の叡智が馨り立つ厨房幸福故事。すぐに続編が読みたくなってしまうその面白さ。
表紙・デザインの簡素かつ洗練された美しさは特筆すべきものがあります。ウーさんの“食への思・想”が本のかたちでアートしているようです。