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本音を申せば

価格: ¥1,650
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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見通しの甘い政談はやめてほしい ★★★★☆
雑誌連載のエッセイ第7集。2004年分を集めた本である。すでに何度か書いた理由により、私がこのシリーズを読む順番が多少ずれた。第1集から第3集を読み、第5、第6集と読んで、そのあとに第4集、そして本書、となった。しかし、この順番は変則ではあるが、結果としてよかったと思っている。

第4集は2001年、戦後史上最凶の政治が国民の圧倒的支持を得て始まった年であった。当時、作者は若干の危惧をもちつつ、しかしその「改革」に、明らかに期待していた。それが2年ののちどうなったか。評価は「無能・最低・最悪」(p.124)。

見事に口を拭って、安全な立場に避難したようだ。180度、とはいわないまでも、170度くらいの転向である。いつまでも意固地に支持を続けるよりましだけれど、しかし、作者が自身の不明を「反省」したのかどうかが気になる。過去に何度も同じ過ちを犯しているからである。そして、この本の中でも、まだ彼は庶民の判断力に敬意を払うという大間違いを働き、おかしなメディアを持ち上げることを止めない。国民の6割が政治家を見かけで選ぶという、民主主義の臨死状態にある国にわれわれは住んでいるのだ。この翌年の衆議院議員選挙の結果を知っている今となっては、作者の見通しの甘さが痛々しい。またそうした点で、本書の解説はまったく正鵠を得ていない。解説が単に宣伝に過ぎないことがよくわかる、幇間まがいの文章である。

相変わらず、芸能関係の指摘・評価は実に鋭い。しかし、政治向きとなると「てんでだめ」である。風向きが悪くなったときの悪口なら誰にでも言えるのだ。そして最後に私は作者に問いたい。あなたは「大日本文学報国会」という団体を知っていますか?それが今どうなっているか、知っていますか?あなたは自分の文章の掲載誌の、他の記事を読んでどう思いますか?
懐古趣味と頑迷さに満ちた残念な作品 ★★☆☆☆
本書は著者が「週刊文春」に「人生は五十一から」と言う原題で連載していたエッセイを纏めた物の2004年度版。この年を表わす漢字は「災」。私は「災」にちなんだ小林氏の舌鋒鋭い論評を期待していたのだが、モヤモヤした印象を受けた。小林氏が枯れたせいか。

私のミステリ観は小林氏に近い(「地獄の読書録」に影響を受けたせいもある)が、映像観は異なるようだ。後半で「映画のリメイクは構わない」と言っておきながら、NHKが黒澤明監督の「七人の侍」の設定を借りた点を批判するのは自己矛盾であろう。それとも映画とTVを区別しているのであろうか。「乱」以降の黒澤作品を全く評価していない小林氏が、その点に触れないのも不満が残る。全般的に批判の対象がNHKとか小泉内閣(当時)とか芸術を理解できないマスコミとかであって、安易に過ぎるのである。かと思うと、映画や芸人を含め昭和30年代のノスタルジーに走ったりする。「五十一を過ぎて懐古趣味に走った頑固者」のようである。また、戦場経験がない癖に戦争経験を盾に取り、平和主義者(良い子)ぶりっ子をするのは見苦しい。更に、2004年を扱っていながら、時代を採り上げたのは新潟県中越地震くらい(東京に住んでいて地震を怖がる心境も不明。諦めるしかないだろう)で、作品から時代の香りが感じられず、この年を記録する意図があったか否か疑わしい。かつて、時代の観察者として鋭いエッセイ・小説を発表して来た著者を知っている私としては寂しい。本書と比べれば、同じ2004年を扱った爆笑問題「偽装狂時代」の方が切り口が鋭い。

著者の衰えをハッキリ感じさせる作品で残念である。再度、広い視野に立って啓蒙的かつ面白いエッセイ・小説を書いて頂きたい。
その時の空気 ★★★★★
小林信彦さんは、その時代の空気をうまく描ける人だ、と私は思っている。中野翠さんのと小林信彦さんのと、座右の書のようになってしまっているのが我ながら不思議だ。ご両人には気力体力の続く限り続けてもらいたいものです。
どのように言うか、書くか ★★☆☆☆
この人はどんなことでも知っているのだが最近のタレントは良く誉めるのだが、バラエティは見ていないらしい.
単に好き嫌いで判断していないか.それとも女優だけは気にいるのだろうか.
そのあたりに偏見を感じた.
政治に関しても「クレマンソーの法則」(現在の政治家が一番悪い)
で評価しているからひどいと思う.
それとも小泉後は少しはましになるのだろうか.