当初、「統合マーケティング戦略論」を読んだ際に感じたのは、内容としては、それなりに面白いテーマを取り上げており、事例も豊富に紹介されているけれども、内容が論文に近い構成で、さらに翻訳がそのまま訳しているために読みにくさを感じました。
そして前著にあたる本書でもその感は拭えませんでした。
内容においては、マーケティングの基本的なポイントがきちんと押さえられており、それらについて、マーケティング分野の世界的権威である著者たちが、豊富な事例と時代に即したしっかりとした考え方を延べており、なかなか面白いと思いました。
先に論文に近い構成と書いたのは、たとえば第1章の冒頭でいきなり「セグメンテーションとターゲティング」にはいり、その意味と事例の紹介に進むという内容になっています。通常であれば、何らかの前段があり、それを受けて、マーケティングの効率を上げるためには、「セグメンテーションとターゲティング」が有効ですというリードが入り、それから内容にはいるというのが一般的な構成だと思います。
そのためマーケティング全般について押さえられているからと言って、けして入門書のように基礎的なことがやさしく紹介されているわけでもなく、章ごとに異なる著者が研究をしている内容をピンポイントで押さえ、最新の事例と考え方が紹介されているという感じです。
このようにいきなり始まっても理解できる、つまりある程度マーケティングの知識を持っている人を対象に書かれています。
内容には共感できる部分が多いだけに、最初の構成や翻訳段階で工夫があればもっと誰もが読みやすくなったのにと残念に思う次第です。
ビジネススクールの教科書として考えれば妥当ですが、あくまでもそれ以上の存在ではないという感じです。
マーケティングの入門書として、マーケティング全体の流れの中で、ステップを踏みながら理解を深めていきたいという方にはあまりおすすめできません。