まったく世界観に入り込めなかった
★★★☆☆
「日本語で書かれた、最も美しいハードボイルド探偵小説」と銘打ってある。確かに美しいハードボイルド探偵小説であったと思う。が、まったく世界観に入り込めなかったため、自分には合わない作風であるといわざるを得ない。高村薫の「リヴィエラを撃て」のときと同じように、キャラクターが全然頭に入らず、誰が誰だかまったくわからないまま最後になってしまった。おれってだめだなー。「ロング・グッドバイ」ってのは、「長いさよなら」ではない。綴りが「WRONG GOODBYE」なので、「まちがったさよなら」という意味である。どーでもいいか。。
独特の空気感を体感できる傑作!
★★★★★
小説の中には、その全体に漂う空気感がある。
それが、ストーリーとあいまって雰囲気をかもし出す。
その空気感で私が好きなのが、 レイモンドチャンドラーの”ロング グッバイ”だ。
日本を舞台にして、この空気感は出ないだろうなと思っていたら、同じ空気感を持っている作品に出会った。
それが、この矢作俊彦の”ロング グッバイ”だ。
題名からわかるように、レイモンドチャンドラーの作品のオマージュになっている。
しかし 題名は Long ではなく Wrong なのだ。しゃれが聞いている。
基本的なストーリーの枠組みは同じだ。
友人と出会い、別れ、また再会する。
それだけなのだが、場所を良く知っている横浜、横須賀を舞台にしているせいか、
小説のなかにのめりこんでいく。
謎解きは二の次だ。
大人のエレガントさを感じた。
チャンドラーへのオマージュながらも矢作俊彦らしい。
★★★★★
『リンゴォ・キッドの休日』、『真夜中へもう一歩』の主人公、二村が帰ってきた。その二作を読んだのは高校生のころだから、もう20年も経つ。
久しぶりに読んだが、当時のハードボイルド・ブームが思い出されて懐かしい。
題名からしてレイモンド・チャンドラーへのオマージュなのだろうが、矢作俊彦らしさもあって、決してパロディーっぽくなってはいない。
横須賀や横浜の街をうまく使いっている。たしかに、日本でハードボイルドが似合う街は東京ではなく横浜かな。
二村はフィリップ・マーロウなのだろうが、マーロウが私立探偵になる前の地方検事局にいた頃はこんな感じだったのだろうと思わす。やたらと、頭を殴られて気絶するところまで、そっくりだ。
うーん、ハードボイルドっていいなぁ。また、『リンゴォ・キッドの休日』、『真夜中へもう一歩』やチャンドラー、ハメットあたりを読みたくなってきた。
港町ブルースだぜ
★★★★☆
彼の作品はストーリーが面白いというより、街の風景がリアルで、生きたヨコハマを楽しむことができる。
昔、友人に連れられて、沖縄で米兵達だけが集まるバーへ連れて行ってもらったことがある。
その店のにおいが漂うような本である。
特に超人的な何かを持つわけでもない普通の刑事が、油の混じった匂いのする潮風に吹かれながら、真相に近づいていく。
若者が読んで面白い本とは言えないが、昔のハマを知っている大人が詠むには最高の一冊である。
日本語で書かれた最高のハードボイルド
★★★★★
チャンドラーの「長いお別れ」のプロットを借りながら、
組織人として働く二村刑事の設定はマーロウとは異なるし、
彼が追いかけている事件そのものも本家とはまったく別物。
そして、そこに在日米軍や華僑という横浜周辺ならではの要素が盛り込まれ、
過去の二村永爾シリーズの登場人物も現れて整合性も保ち、
底流に現代日本への批評を織り込みながら、
最終的には「長いお別れ」のパロディとしても成り立つようにしている。
日本の(少なくとも)他のハードボイルド小説とは段違いの格。
矢作俊彦と同じ時代に生きていてよかった。