ダイナミズムな明治維新の構想と、その実行
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今までのマルクス史観だと、明治維新は敗北した人民革命だという。つまり、薩長独裁政権による人民弾圧の歴史という見方が戦後から占めていたのだが、本書はそういった見方を根本的に改めて、維新の後進達がどのような日本を目指したのか?その理想と現実をどこまで整合していったのか?マルクス史観の矛盾や、佐幕贔屓の視野狭窄な研究家があえてふれようといなかった明治前期から中期までの政治的葛藤から文明開化の広がりまで描いている。
特に、薩長藩閥による独裁といいながら、彼らも民意がなければその政権基盤は危うかった事。自由民権運動自体が敗北の革命ではなく、大日本帝国憲法が発布される過程に於ける重要かつ痛みを伴いつつ、日本人が「維新の構想」を実現させた重要な運動である事を示している。
それは、故・小西四郎が言う所の人民が参加すればこその「維新の展開」であり、維新の元勲だけではなしえなかった維新革命の重要さを明らかにしている。その文言にネガティブなところは無く、憲法発布こそ維新の到達点であり、志士達が目指そうとした日本の独立を表していると言えよう。