ところがある日、お母さんがその敷物を洗ってしまった。作者はなかなか、楽しいメタファーを思いついたものだ。才能を「洗濯」してしまうとどうなるか。才能はみんな落っこちてしまった! 世の中には、幼くして天才といわれ、その後どこかへ消えてしまった人たちが大勢いるが、みんな「洗濯」のせいだったのか。天才として特別扱いされた人からその才能を取ってしまうと、「ただの人」か、えてして多くは、常識がなかったり独善的だったり、いわば普通以下だったりもする。エマは幼稚園で、扱い難い子になってしまった。
敷物の洗濯後、からっぽになってしまったエマに、しばらくして変化が訪れた。敷物がないのに、イメージが浮かんでくる。どこにいても、どこからでもそれはわいてくる。創造の源、白い敷物がその隠喩だったわけだが、今、エマはまだそれがあることに気づいた。そしてその場所は幸運なことに、彼女自身の中だった。
才能の有無の見きわめは難しい。でも、本物は「洗濯」しても、よみがえる。これを作者の優しいメッセージと取るか、厳しいメッセージと取るか。(おおしま英美)
心に響く絵本でした。これは、子育てする親のための絵本ではないでしょうか。子供の中にある、言葉にならない宇宙を、大切に見守ってあげたいと思いました。
英文は平均10行程度。英検2級程度の人は、辞書を引きつつ読めそうです。