近世以降に重点の置きすぎ
★★★★☆
歴史を専門に勉強していない読者、社会人で歴史に興味を持つ人のために書かれた西洋史の入門書である。
歴史の教科書は無味乾燥、事実と学説の羅列のみといわれるのを避けるために、著者が自分で撮影した写真を多用したり、もろもろのエピソードをコラムという形で提供したりしているが、少なくとも古代から中世までは「無味乾燥」を避けることは出来ていない。
本書は各専門の時代、分野にしたがって、5人の学者が分担して書いているが、本文289ページのうち、古代・中世にあてられているのが僅か100ページ前後であり、この部分はどうしても中身が薄くなっている。我々が常識や物語で知っている、興味ある人物を一回なまえを上げただけで、エピソードもなにもなく先に進んでしまったり、著者たちが一番避けようとしていた、人名の羅列で終わってしまっている部分が多い。
それに比較して近世以降は200ページ近いスペースを割いているので、読み物としても興味ふかい。ただ、この部分に関しても、歴史を理解するに必須と思われる、当時の地図が不足している。私はインターネットで地名や地図を検索しながら読まねばならなかった。
古代ギリシャ・ローマから2001年9月11日の同時多発テロの発生までを約300ページの書物にまとめて、全部の読者を満足させるのは至難の技とおもうが、面白く読ませるためには、もう一工夫欲しかった。