人間ならではの簡便法
★★★★☆
この本は、コンピュータや一部の天才がするような意思決定の見本としてベイズの定理を挙げています。それに対して、平凡な人間が実際に用いている簡便法としてヒューリスティックやプロスペクト理論などを挙げています。どちらにも特有の落とし穴があるので、どう避ければいいかポイントを書いてあります。
ベイズの定理は難しいので一般向けの本からは割愛されることが多いのですが、理論的にはこうなるという枠組みを頭の隅に入れておくだけでも損はないと思います。
合理的な意思決定は、御説の通りなのだが
★★★☆☆
合理的な意思決定とは、どのようにあるべきかが書かれている。
確率論的期待値だけでなく(ここまでなら、理数系の人なら、理解は早い)
各人にとっての期待効果の観点も含んで考える点など、御説ごもっともだ。
経済で語られる、貨幣価値にすべて置き換えるよりは納得感があるだろう。
しかしだ、人間は、そこまで合理的にできていない。いろんなバイアスを受けてしまうことは、行動経済学、ゲーム理論で語られている。
もちろん著者もそのことは承知の上で、そのことも後半には触れられている。
そこまで知った上で、どうしてバイアスの罠にハマってしまうのか。
あるいはそれにハマらないようにするためにはどうしたらよいのか。
そこらあたりの突っ込みを続編で期待したい。
アプローチは面白い
★★★★☆
シンプルな数理理論から人間の意思決定に役立つ内容を導こうとする
アプローチは面白くて、本質をついているように思う。
ただ数学要素を多分に含んでいること、確率という分野が特に苦手な人にとっては
労が多すぎると思う。また文章もやや硬めで、比喩や言い回しを使う気はあまり無い。
著者にとやかく言う筋合いはないが、せっかく面白くて役に立つものなのに
もうすこし読者への配慮があったなら と思うと残念である。
確固とした人生の目標を持て、るか
★★★★★
(主観的)期待効用モデルを受け入れることは、
合理的であることを自認する人々にとってたやすいだろう。
効用関数が一定であることが後悔を少なくするというのもわかった。
一つだけ悩んでしまうのが、効用関数を一定化するために必要な、「確固とした人生の目標を持」つという要求だ。
確固とした人生の目標とはどのようにして決まるのだろうか。
いや、「決まる」というと、状況依存的であるかのようだが、
無から生まれた人生が決める目標など状況に影響を受けないわけがないと考えてしまう。
いや、しかし、状況依存的に決まった己のパーソナリティを知ることで、能動的に決めることができるのだろうか…。
もう一つ、不確定性をヒトが避けるという点から、
不確定性の少ないものをヒトは確固とした人生の目標に設定してしまうのではないか、
つまり、目標設定自体が意思決定であることが多いのではないかということ。
「後悔しない目標設定」という題でもう一冊書いてください…。
読後にはそんな疑問がわきつつも、
この本を読むという意思決定は極めて合理的です。
読みましょう。