ずっと元気でいて欲しかった。
★★★★★
この本の影の主人公(かもしれない)ウメ子は昨年の9月に亡くなりました。
そろそろ桜の季節がやってきます。これからはウメ子にふわーっと桜のシャワーをかけてもらえないんだな、と思うととても寂しいです。これから先、この本を読み返すたびに、自分のしょっぱかった若い頃を思い出し、ウメ子を、小田原をもっともっと好きになると思います。
中村さん、こんな素敵な形でウメ子を残してくれて本当にありがとうございました。
ピンポイントすぎますが、小田原市民の方々に是非読んで欲しいと思います。
中村さんらしさが滲み出た傑作
★★★★★
あなたがここにいて欲しい、男子五編、ハミングライフの三篇からなる薄めの短編小説集。
その薄さにはそぐわない完成度だと思います。百回泣くこと、に共感した方なら、きっと
本作の物語たちにも心温めてもらえるでしょう。
個人的な印象として、中村さんは理系ですが非常に女性的な(穏和な)男性を主人公に置く
ことが多い気がします。主人公には語り部としての役割から作家自体の人間性が濃く滲み
出るものだとは思いますが、本作でもそれは顕著なわけです。というよりも…。
ここから先はネタバレなので自重します。
とにかく、中村航さんの書く穏やかで中性的な文章に心奪われました。返して下さい。
吉田くん。もしどこかにいるなら私と友達になろう。
「あなたがここにいて欲しい」 静かに温める思い
★★★★★
吉田くんの中には色々な思いが溢れている。
でも吉田くんはその色々な思いを大きな声で伝えることもなく、静かに大切に抱えて成長していく。
吉田くんが心の中で掴まえた何かは、言葉にしようとすると、どこかにするりと逃げてしまう。
吉田くんはちゃくちゃくと、前に進んでいく。自分の速度で進んでいく。
そして、吉田くんは、爽やかにやってのけるべく未来へ進んでいくのだ。
それで良いのだ。
そして、「ハミングライフ」がとても良い。
穏やかなときの流れを感じるウロメール。
とても良いリズム、言葉の交換。
心が優しさに満たされる。
優しいイメージの表紙そのままの作品でした
★★★★☆
恋愛アンソロジー「LOVE or LIKE」に収録されていた「ハミングライフ」が大好きで、
もう一度読みたくて、今度はこっちを読んでみました。
やわらかく、優しいイメージの表紙のイメージそのままゆったりと穏やかな時間の流れる心地いい作品集です。
表題作の「あなたが〜」は語り手が誰なのかはわからないけれど、
三人称で主人公は「吉田くん」と表記されていて、それが作品の雰囲気を膨らませるのに効果的♪
吉田君を見えない誰かがあたたかい眼差しでいつも見つめている。そんな「つつまれている感」も心地よい。
どうやら私も生き急ぐよりは吉田君みたいにゆっくりしっかり見極めながら生きていく方が性に合ってる感だし、
なんだか妙に波長が合うような気がしました。
「男子五編」はおそらく著者のこれまでをそのまま綴ったもの。
そしてやっぱり「ハミングライフ」はど真ん中にキュンとくるわー(*^_^*)
イラストもツボだし、二人のやり取りはいちいちセンスがいい。こんな恋愛、憧れるなぁ。
これからはほっこりした気分になりたいときには、中村さんの本を読むことにします。
温かい風
★★★★☆
小田原城と象。
なんとなくミスマッチな気もしないでもないけれど、
でもずっとその風景を見ているとそれが自然になる。
吉田君と舞子さん
吉田君と又野君。
一緒にいて自然な関係、
すごく落ち着ける居場所が、そこにある。
そんな感じが良く出ていて
読後感もあたたかでした。
まぁ、自分の中では
表題作よりも
「ハミングライフ」の方がお気に入りですけど。
運命の人との出会い、
こんな出会い方もいいなぁ〜。