温室デイズ
★★★☆☆
この学校生活のどこが温室なんだろうと思うほど過酷。
閉鎖的という意味での「温室」なら分かるが、決してぬくぬく育っているわけではない。
恐ろしい日本の教育現場の現実と向き合う本。きついが、救いも。
★★★★★
中学は、社会に出る前の「温室」と言いながら、あまりに恐ろしいいじめと荒廃の現実に息を呑む。自分の子供がこんなところに行っていたら、いじめた子供を殴りに行くか、すぐに自分の子供をもっといい学校へ転校させるだろう。やはり公立中にはやらず、私立にしようか、と思う。
しかし、やはり、逃げるだけでは社会は良くならない。この学校の現実は、北朝鮮か、戦前の日本社会みたいで、窒息してしまいそうだが、日本の現実でもあるのだ。少しで良いから、皆が努力することなしに、この社会は良くならない。それをこの本で再度学んだ。
主人公の女子生徒二人(とサポーターの教師見習い)が、いじめと暴力に会いながらも、自分なりの方法で、学校を変えようと努力する姿が、清々しく、美しい。
奇跡ではなくても。
★★★★☆
本の紹介には「2人の少女が起こした小さな奇跡」とありますが、それを期待して読むと外れかもしれません。
荒廃した中学校で奇跡なんて簡単には起きない。
でも、(2人の少女だけでなく)みんながそれぞれのやり方で少しずつ「温室」という現実に向かおうとする、その必死さに切なくなりました。
暖かい親子関係や恋人たち、飄々として爽やかな高校生などが出てこないので、ほかの瀬尾作品と少しテイストが違います。
ですが、結末にものすごいカタルシスを置くのではなく、結末に向かう過程が丁寧に描かれているのは同じ。
その過程に心を揺さぶられる思いでした。
学生時代の甘酸っぱい記憶がよみがえる
★★★★☆
”本当にありそうで、ないこと”
それが優れた本、と教えられたことがある。
まさに、そのお手本のような本だ。
どこにでもある
学校の風景に見える。
でも、
きっとないんだろうなと思える。
その境界線を
バランスよく行き来している。
学生時代の甘酸っぱい思い出たちが、
走馬灯のように、駆け巡ってしまった。
『温室デイズ』
温まるのは読者の心にちがいない。
告発文
★★☆☆☆
物語に名を借りた教育現場の現状を訴える告発文的作品。
なので登場人物や舞台はそれぞれ象徴的で極端な描かれ
方をしています。
ラストも物語として(ひとつの)解決方法を描く事はできたとは
思いますが、作者が実際に教育に携わっている事や作品の
性格上安易な解決方法を描く事をしなかったと言うより出来
なかったのではないでしょうか。
とは言ってもガチガチのドキュメンタリー風でも説教臭くもなく
きちんと物語として成立しているのはさすがだと思いました。
又途中で語りの視点が変わる事により、誰か1人に感情移入
する事無く作品(問題点)を俯瞰的に見る事になります。
その辺りにも、単純に誰かが悪いとか何かが悪いとは言えない
という作者のメッセージが有るような気がしました。
いじめや学校生活に最終的になんらかの答えが欲しい人や、
カタルシスを得たい人には向かない作品だとおもいます。
実際に教育現場に携わっている人が読んで、どういう感想を
持つのか聞いてみたい気がしました。