きらりと輝く書き出 ぐっとつかまれた
★★★★★
この本の書き出しが大好きです。
象徴的で刺激的で。
少しずつずれた一家を描くお話。
すこしつなぎとつなぎが「粗い」感は否めないが
その辺りは大人の都合もあるだろうし。
3話目か4話目あたりの
直ちゃんのせりふが素晴らしい
集団の仕事を誰かが効率よく全てこなせば、
最初はみんな感謝するかもしれない。
しかし、それが集団の中で「当たり前」になってしまえば、もはや感謝することはない。
むしろ、役割を奪われたその他の人は、コミットメントが下がったり、反感を抱くようになるのではないだろうか。
数年前から気になっていたことをこんなにうまく表現してくれるなんて素晴らしい。
学校の先生だから書けることなのだろうか。
役割からの逸脱と役割によってもたらされるモティベーション。時には誠実に時には思い切ってはずれて見ることも大事だ。
こういう家族、現実にあるかもしれないですね。
★★★★★
大浦君が亡くなってしまったのはショックでした。
家族が少しずつ元通りになって、直ちゃんはヨシコと良いパートナー関係を築き、佐和子と大浦君も
…と思っていましたので。
「お話」なのですから、これくらいのビックリを描いていないといけないのかもしれませんね。
家族の気持ちが離れていったり何かがきっかけで意思の通い合いがあったりというのは、日常的に
あることのようで、佐和子のところのような家族は私の周りにもあるような気がしています。
会話文に「えっと」が何度か使われていて、気になりました。
話のきっかけをつかみたいときや言葉に詰まったときなど、確かに私たちは何か発しているはず
なのですが、「えっと」とは少々違う感じがしています。
作者の癖なのかしら…。
青春?家族?小説
★★★★☆
中学校の教師であった著者、瀬尾さん。
独自のみずみずしい感覚やテンポを持っていて、ある種の読者の心をぎゅっとつかむだろう。
私にとってはさらりと読めて、可もなく不可もなくの作品だった。
後半の急展開には違和感を感じた。
全体的に、健全で平和であたたかい雰囲気が漂っていて、朝のひかりのような
清らかなオーラを感じる作品である。
悪い意味ではないが、視点に教員らしさが垣間見えるところが結構ある。
不良になっても、どこまでも健全の域を出ない不良というか。
みんながいい人で、善良だ。
私のように、リアルな、人間心理のダーク・サイドに惹かれる人には、
多分、それほど目を引く作品ではないけれど、
健やかな気持ちが描かれた作品が好きな人には
物語の運びも筆致も、ぴったりなのではなかろうかと思う。
家族って大切ね〜。大事にしなきゃ!
★★★★★
家族の大切さを感じるこの作品。
父や母や兄、そして佐和子。
それぞれの気持ちや生き方が
日常の中から見えてくる。
いろいろな出来事を経験した家族が
どうなっていくのかと、
先へ先へ読みたくなる作品でした。
映画化された作品も是非観てみたいです♪
瑞々しい佳作
★★★★☆
家族ものの小説はテーマが重くなりすぎて、ブラックホールに行ってしまうか、あまりにも平凡で印象に残らないものが少なくない。
本書は後半のどんでん返しも含め、重いテーマを扱いながらも、登場人物の優しさがさりげなく描かれ、読後感がちょうど良い。このバランス感覚が作者の腕なのだろう。
佳作と思う。(映画はちょっといただけなかったが)
特に、主人公・佐和子が食卓で普段言わないようなひどい発言をした後で、兄の直ちゃんのフォローにはちょっとやられました。「かわいそうに。佐和子はそんなことを言うほど傷ついていたんだね」 ヤバイです。