内容が中途半端
★☆☆☆☆
tamanoaoisora さんやカスタマーさんの意見に賛成。用語や記号が何を意味するかの定義が抜けているケースが何箇所もあり、説明されている内容の半分も理解できない記述が多い。結局、量子コンピューターがどういう理屈で作動し、どういうことができるようになるのかは、イメージできなかった。図を使わずに文章で説明しようとしていることに無理があると思う。筆者も本当は理解できていなくて、専門家の文章を切り貼りしているから適当な図をつけられなかったのでは、と疑ってしまう。分かったのは19世紀から20世紀初頭に誰がどんな研究をして量子力学、量子論が発展してきたか、だけだった。物理の高等教育を受けていないと理解できないと思うけど、そういう人にとっては物足りない内容だと思うし、受けていない人には理解できない記述だらけ。本書の目的からすると、専門的な説明より、量子コンピュータなるもののイメージを後者の読者に植え付けるような記述であるべきと思う。読んで損した。
2004年の本です
★★★☆☆
本書は、実質「量子コンピュータ」(というより「量子ビット」?)としての説明は後半半分(第8章〜第12章)なので、すでにその方面で前提知識がある人にとっては、この厚みの半分以下で事足りるかもしれません。前半半分は、「量子論」なんかの既読の本とかぶりまくっています。
2004年時点(実質本書が店頭に出たのは2005年初め)においては、本書後半部分の記載に同等な本がなかったので、その意味では読むに値するものだったかな、とは思います。そしてタイトルとおり、これはあくまで「誘い」であり、最初の入り口としての本なので、突っ込んだ技術論を求めるのは酷です。日進月歩の分野なので、2006年以降はもっと技術的に突っ込んだ、具体的な応用を説明した本が多く出ると思うので、この本を機により高みを目指したいと思います。
EPR相関に興味を持つ方にはオススメ
★★★★★
ミクロなサイズ特有の量子力学的現象をマクロなサイズで実現した超伝導解明のカギを
電子とフォノンの相互作用だと喚起し、BCS理論を説く件は簡潔である。
「量子コンピュータは、データの取りうる可能性を、可能性のままで処理するのである」
|0>と|1>の二つの状態の重ね合わせ、即ち「量子ビット」であることは、
同じ条件で測定しても、測定結果が|0>と|1>の間を振動していること、
即ち、|0>か|1>かは確率的(統計的)にしか分からないことを示せばよい。
量子ビットと周囲との相互作用をなくすことは不可能である以上、
重ね合わせ状態をいかに持続させるかがポイントであり、先行研究者の活躍ぶりが紹介されている。
本著作は、量子論の応用を意識する向きが、本格的学習に入るにあたって、もってこいの水先案内人です。
けっこう前に、1度読了した感想
★★★☆☆
本書の中の量子論誕生の歴史を概観する部分は、量子力学とは何かやその誕生のおおよその背景を知っていて、そして量子コンピュータとは何かを知りたい動機で本書を読む読者にとっては、より道のような感を与えるかもしれない。
つまり、そんなことは知っているんだ、この章は要らないから、早く量子コンピュータのことを知りたい、と思う人がいるかも。
量子力学を数式を通して理解している人は、現在では量子情報理論や量子コンピュータを扱ったそれほどレベルの高くない、入門書も出版されているので、そちらを読むとよいかもしれない。
本書の特徴的はところは、前半部は量子論誕生史、後半になるとようやく量子コンピュータの話題になる、企業の研究者が登場してくる、といったところだろうか。量子論誕生史の小論として、量子コンピュータが日本の実際の現場でどのように開発されているかを知る資料として見ると、他の書には無い内容を含んでいるのかもしれない。内容をしっかり理解できるかどうかは、読者の知識と努力にかかっているが、高校生が気軽に読んで理解できるほどの説明はなされていない。
僕は物理学を学んでいる大学生だが、今、超伝導や量子ドットなどに以前よりなじんでいるので、また本書を読み返してみれば、おもしろく読めるかもしれないと期待している。
「高校生にもわかる」は努力目標かも
★★★★☆
仕事で量子論の片鱗に触れざるを得なかったことのある私には、この著書の前半部分である量子力学の歴史がとても興味深かった。
他のレビューで、歴史の記述は不要との厳しい意見もあったが、私はむしろ、量子論の本質をしっかり理解してもらうためにはやはりここまで歴史を辿らないと無理なのだなぁと改めて実感した。
その上で、やはり本論である量子コンピュータの理論は難しいというほかない。大学で物理を学んだ人でも、このあたりの本質をしっかりつかんだと言える人は少ないのではないか。まして量子とは何ぞや自体を知らない高校生に理解させようとするのは・・・。
レベル的には、この問題に関心を持ち、少しかじった人が改めて知識を整理するのによい、というところではないだろうか。
出版社の宣伝文句として、著者自身も望まない過剰な表現を「言わされる」場合もあるので、ここは著者に本音を聞いてみたいところだ。