「子供たちの質問に答えて」と題された著者あとがきや、「付・ひとりの読者から」とし~~て巻末に置かれた河合隼雄の文章も読み応えがあります。~
ヒルベルは出産のときの外傷のために、原因不明の頭痛や発作を起こしたりします。言葉も上手く話せません。父親は不明で母親にも見捨てられてたのです。あるときヒルベルは遠足の途中で一人ぬけだしてしまいます。当然警察へ届けなければなりませんが、施設の先生たちはヒルベルがこの施設にいられなくなるいことを気遣い、眠ることも出来ずに朝を待ちます。そしてヒルベルは帰ってきました。羊の群れで眠っていたのです。ヒルベルはこの羊の群れをライオンと言って、一緒に行動し嬉しかったことを好きな女の子にだけ話したのです。とてもすらすらと。(実は、このヒルベルというのは彼の本当の!名前ではなく、あだ名なのです。ドイツ語でヒルンは知能を、ヴェルベルは渦とか混乱を意味します。)楽しい遠足で一番楽しく冒険したのはヒルベルではないでしょうか? でもそれはだんだんと大人たちの手に余ることでしかないものになるのです。ヒルベルは最後の脱走で警察にとらえられ、病院へ追いやられてしまいます。当然必至で抵抗します。けれどもそれは、施設の優しかったはずのお医者さんの「発作だ!」という一言で片付けられてしまうのです。著者のヘルトリングは――だいじなのは、ヒルベルのような、病院や施設でくらさなくちゃならない病気の子どものことを、きみたちが知るということなんだよ。――と言います。