死相学探偵第３段！

「六蠱」という呪術を行う為、若い女性を殺害する連続猟奇殺人犯に死相学探偵・弦矢俊一郎が挑む

今作の事件、動機はオカルトだが、事件自体は人間が引き起こしている
前２作に比べ、ホラー要素は激減し、本格ミステリ度ＵＰ
（作中で、島田荘司氏のデビュー作「占星術殺人事件」にふれられていたりします）
ミステリの定番トリック「見えない人」が用いられていますが、二重三重の霧に包まれている点は流石！

また今回、弦矢俊一郎が警察の捜査会議にオブザーバーとして出席する等、警察との連携を強めます

完璧な美を備えた女性の肉体をつくり出すという呪法〈六蠱の躯〉
のために都内で続発する猟奇殺人が描かれるシリアルキラーもの
（〈六蠱の躯〉は××××の〈アゾート〉と類似するアイデアですね）。


「シリアルキラー〈六蠱〉は誰か」という犯人探しが主眼となり、
そこにミステリでは定番の《見えない人》によって二重三重の
煙幕が張り巡らされているのが本作の特色です。

シリアルキラー〈六蠱〉について、読者は無意識に先入観を抱いてしまいますが、
作者はその先入観を最大限に利用し、年齢、性別、職業といった観点で、読者の
心理的盲点を衝く巧妙な仕掛けを構築しているのです（また、本シリーズ特有の
“死相”を、犯人を隠蔽するカムフラージュとして用いているのもすばらしいです）。


そして、そうした読者の固定観念を解きほぐしつつ、容疑者
を二転三転させていく解決場面の謎解きは、じつにスマート。

ホラーとしてはかなり薄味ですが、ミステリとしてはなかなかの佳作だと思います。

面白かったけど「四隅の魔」のようなじわっと来る怖さがなかったのが残念。
あの作品はちゃんと「ホラーとミステリーの融合」みたいなバランスが絶妙でした。

ホラーに突出しすぎるのはこのシリーズの意図するところではないでしょうが
ミステリーだけを押すのなら、他の方もおっしゃるように、
「ホラー文庫」である必要性がないと感じます。

僕にゃんや曲矢との掛け合いなどのライトなノリは今回も楽しかったです。

次回作品に期待！

このネタならもっと面白く書けたと思うのに。
会話だけで話が進んでく感じでした。

せっかくのアイディアを勿体ない。

「十三の呪」「四隅の魔」につづく死視シリーズ第3作。
表紙裏あらすじに美乳などという文字を見て少し怯む。

四隅の魔でホラー度が高まったのが原因か、本作ではスッパリ減退。角川ホラー文庫である必要性は、まあありません。

"本格"という観点からしても、前作、前々作よりその味は薄めであると思いますが、終盤推理が二転三転するのは相変わらずすさまじい。

シリーズファン(自分を含めます)は次作のホラー分増加を祈りつつ買いましょう。
初めての方は「十三の呪」から。