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クレーヴの奥方 他2篇 (岩波文庫 赤 515-1)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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政治と恋 ★★★★★
フランスでは高校生の教科書に採用されていて現サルコジ大統領が「高校生が読む本ではない」と発言したという超有名な宮廷恋愛小説。マノエル・ド・オリヴェイラ監督による映画化(「クレーヴの奥方」原題は「手紙」)やクリストフ・オノレ監督による映画化(「美しい人」現代の高校を舞台にしたもの)などがあります。

誠実でやさしい夫を持っている人妻が、人生で始めて本当の恋をしてしまって苦しむという話。読みどころは、秘められた恋の相手の男が人妻の肖像画を盗むところと、二人の関係者が紛失したラブレターをめぐって二人が恋を確かめ合うというところ。上記二つの映画もこのあたりに焦点があたっています。結婚と恋愛が一致する近代的な結婚観以前の当時の宮廷にあって、ひたすら男を拒絶する人妻、にもかかわらず抑えられない恋心の葛藤を描く心理描写がすばらしい。覗き見、たち聞き、噂話に本心が表れてしまうという恋愛小説の王道も押さえています。

さらに今回、原作小説と映画の違いとして興味深かったのは、小説における当時の政治勢力の描き方。二人は単に結婚と恋愛の板ばさみにあっているだけではなくて、彼らを取り巻く宮廷の政治力学(アンリ2世の時代)が事細かに描かれています。イギリスのヘンリー8世やのちのエリザベス女王まで出てくる。原作はフランスの絶対主義国家が形を整えるルイ14世の時代。ひとりの強い王とひとつの強い国家の時代になったからこそ、それ以前の封建的な政治体制における政治的な駆引きがはっきり見えるようになったのかもしれません。名作。
現代に通ずる恋愛心理と女性像 ★★★★★
 原作は1687年に出版されたフランス古典文学の代表作であり、作品の舞台はさらに1世紀あまりさかのぼったアンリ2世時代の宮廷を中心とした貴族の世界である、といえば、いかにも古めかしく聞こえるかも知れない。しかし、その優雅な世界で繰り広げられる恋の物語を、主役、脇役を含めた多数の人物の性格や言動を適確に描き分け、また、いつの時代にも通ずる微妙な恋愛心理を巧みに描いた作者の筆致には、古めかしさはほとんど感じられない。訳文も滑らかで読みやすい。ヒロイン、クレーヴの奥方の道徳観は、現在では古いと考える人も多いかも知れないが、時代を越えて尊重に値するとみる人も少なくないであろう。予期される第2の不幸を避けるため、奥方が自分の意志を貫くところは、むしろ現代女性の力強さを先取りしたものといえよう。評者が本書を読んだのは、1999年にポルトガルのマヌエル・ド・オリヴェイラ監督が本作品をもとに作った映画を見た後である。映画では舞台が現代のパリに移し替えられ、原作の大幅な修正がなされていたため、両者を比較しながら読む楽しみもあった。映画の原題名「手紙」は、原作には出て来ない手紙を指している。その反面、原作には、映画に取り上げられていない手紙に関する面白い挿話もある。なお、本書をを読んでいて、うすうす気づくのだが、自然描写がほとんどみられない。それのある唯一の箇所に訳者の注がついているので、やはりそうだったのかと思い、こういう書き方の名作もあるのかと感心する。末尾に収められている二つの小編は、結末において主作品と対照的なところがあるものの、似たような貴族の恋の物語であり、いささか食傷気味にならないこともない。主作品のための習作とみられているこれらの短編を先に読むのも、一つの手かも知れない。
脇役ながら激しい生きざま ★★★★☆
ヒロインの奥方や、恋の相手ヌムール公より印象的なのが、彼女の夫クレーヴ殿であった。この人こそ、真に愛に生きた人といえるだろう。奥方と結婚したにもかかわらず、狂おしい恋心をもちつづけるクレーヴ殿。身を滅ぼすほどの嫉妬に苛まれつつも、どこか清らかで気高く、優しいのである。人間としてすばらしいだけに、その辛い運命に心打たれる。