毎日が冒険とでもいった風に香港で生活し、徐々に前向きになっていく彩美。最初はさっぱり分からなかった広東語を覚えるのが楽しくなってくる彩美。それまで閉じていた彩美の気持ちが外に向かって広がっていく様子は、見ているこっちまで元気をもらったみたいで、清々しい気分になりました。
彩美の心のアルバムに貼られた香港の風景が、けたたましい広東語とともに立ち上がってくるような話の雰囲気がいいんですよー。ほいでもって、タイトルにもなってる豆腐花(タウフファ)や、<<ぱっつんぱっつん、びよーんびよーんと弾むようなつくねのお団子>>が入った麺、そういう食べ物がまたとっても旨そうなんだなあ。お腹がぐうとは鳴らなかったけれど、口の中に唾が出てきました。
第一章「香港上陸」、第二章「香港ホームステイ」、第三章「香港離陸」になっている、彩美・17歳のひと夏を描いた物語。本の表紙の早川司寿乃さんの装画もいい雰囲気で、その辺からもう「気分は香港」てな感じだったな。
先に読んだ同じ大島さんの『かなしみの場所』とは話の雰囲気ががらりと違っていたから、最初はちょっと面食らったんだけれど、すぐに話の中に引き込まれました。そして読み終えて、「いい元気をもらったなー」という清々しい、あたたかな気持ちに包まれました。