オウムやテロリズムの横行など、不安な世の中が続いている。
カルト教団に入信した人たちは、なぜあれほど易々と教祖の
指示に従って、反社会的行動を繰り返したのだとろうか。
オウムなどは、おそらく薬物で神秘体験を経験させたのでは
ないかと推測する。
著者は、ドイツ史の視点で、ハーメルンの笛吹き男、子ども十字軍、異端審問、魔女狩り、ナチスドイツへと連綿と続く
カルト(かなり拡大解釈しているが)の流れを、ドイツ人の
デモーニッシュな内面性・非合理主義と一方で生真面目な
国民性・論理的思考の二極性に由来すると説明している。
では日本人はどうか、アメリカ人のイラクでの有り様はなぜか。
現代社会のどこにでも、特に自分たちは理性的であると自負し
ている集団にこそ、カルト=集団妄想の芽が内在していると
理解しておいたほうが良さそうだと考える。
穀物の収穫が減少して農村社会の家計が疲弊するのに比して魔女狩りの件数が増加するという相関関係(88頁)は特に興味深く読みました。確かに「ドイツ的徹底性」がカルトを大規模化・残虐化するに与かっていたとはいえ、経済的混乱や時代の大きな混沌がカルト集団の隆盛を促すという視点は、現代社会にとっても看過すべからざる大きな警鐘であり、まさに今の日本にも強く当てはまることであるはずです。
30頁にシュトラースブルクを「現ドイツ北東部の街」と記していますが、これはアルザス地方にあるあのストラスブールのことでしょうか?だとしたら現在はフランス国内に位置しています。それともシュトラースブルクという同名の街がドイツ北東部にもあるのでしょうか?だとしても、フランスのストラスブールと混同される可能性を見越して記述に工夫が必要だったと思います。
なお、本書のテーマに興味を持った読者には以下の書籍や映画も楽しめると思います。
書籍「ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界」(阿部謹也/ちくま文庫)、「魔女狩り」(森島恒雄/岩波新書)、「ハリウッドとマッカーシズム」(陸井三郎/社会思想社)、映画「クルーシブル」。