インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

魔女狩り (岩波新書)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
Amazon.co.jpで確認
人は、宗教的信念によって行うときほど喜び勇んで、徹底的に悪を行うことはない ★★★★★
詭弁論理学 (中公新書 (448))でひかれていたので手に取ってみた。
1970年の刊だが40年後の今日まで60刷を重ねているから、まぎれもなくスタンダードといってよい。こういう本に当たると嬉しくなる。
不勉強にして知らなかったが、中世ヨーロッパを襲った魔女狩りの狂気は、何百万という無辜の民を拷問して自白させ、無実の罪を着せて焼き殺したらしい。なんともむごいことである。古来「魔女」という民間信仰的な存在に寛容であったカトリック教会が、なぜ突如として異端審問、拷問による裁判、有無を言わせぬ極刑に走ったのか。本書はその歴史的経緯をつぶさに追う。P129に拷問の「料金表」がある。今読むと胸が悪くなる内容だが、死刑後に処刑人による財産没収がエスカレートしたため、それを制限するためのルールを教会が作ったものという。理性なのか狂気なのか、ほんとうに混乱してしまう。

 「人は、宗教的信念によって行うときほど喜び勇んで、徹底的に悪を行うことはない」p73

というパスカルのことばをひいている。戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)に、「利潤欲はまちがいなく経済を発展させる原動力だが、欲が行き過ぎないようにするために、徳や正義が市場主義経済の前提となる」とあった。しかしその正義もまた、行き過ぎることがある。正義が行き過ぎたときは、バブルの崩壊どころではない悲惨を生むということだろう。とても重いテーマだった。
狂気が常識化されていた時代・・・ ★★★★★
 この罪なき多くの老若男女が「神の名」(もはや、完全にイエスの精神とはかけ離れているが・・・)において、何十万、あるいは何百万と惨殺、焚殺されていった事実は、私達日本人から見れば到底理解できない所業である。勿論、日本の歴史においても宗教上の対立による争いや内乱はあった。しかし、この様に何百年間に亘って継続的に組織的に公開しながら殺人を行うという異常事態は、世界のどこにもない。
 ・・・著者はこの「魔女狩り」=」魔女裁判」の淵源となったのは、12世紀の南フランス地方で起こった「アルビ派の革新運動」のローマ教会の腐敗・堕落振りに対する抵抗運動に見出す事が出来ると論じている。・・・彼らアルビ派はローマ教会の形骸化したあらゆる儀式典礼を否定した。神の神性は教会堂の中でのみ感得できるのではなく、酒場であろうと馬屋の中であろうと個々人が真摯に祈りを捧げるのであれば、感得出来ると主張した。そして、教会を維持する為の税金を納めることを拒否したのである。・・・この金銭的な損失が特にカトリック側は許せなかったのであろう。ローマ法王は遂に「アルビ十字軍」を組織して、武力鎮圧に乗り出すのである。そして、20年の長きに亘り南フランスの国土と人民は破壊され、この事件が後に「異端審問制」を生み、さらに「魔女裁判」を生み出していったという。
 痛ましい事だが、この魔女狩りの犠牲となった罪無き者達の中にも、「金持ちである」というただそれだけの理由で虚偽の告発をされ、悲惨な拷問を受け、苦しみのあまりにでたらめの「自白」を行い、絞殺されて大衆の前で死体を焼かれるという・・・さらにその本人が所有していた財産は「裁判費用」という名目で全て教会と裁判官達に没収されるという理不尽極まりない運命が待ち受けていたという。
 当時のある神父のこんな言葉が本書内にあった。「残忍な屠殺によって罪無き人々の命が奪われ、新しい錬金術が血から金銀を造る・・・」

 
不快な歴史をひもとく労作 ★★★★★
 魔女狩りは終わっていない。カレーに毒を入れたという証拠がないのに、毒を入れていないという証拠がないだけで死刑にされてしまう社会を生きるわれわれは、中世の魔女裁判を笑うことができるだろうか。対象が異人から罪人へと移っただけで、現代においても処罰への欲求は変わっていない。
 本書は13世紀から17世紀にかけてキリスト教社会を吹き荒れ、30万人以上もの犠牲者を出した魔女旋風を分かりやすくまとめた解説書である。魔女は古くからいたが、悪い魔女と善い魔女がいて、それまでは後者が罰せられることはなかったこと、異端審問の対象が減ったために没収財産獲得の目的で魔女がターゲットにされたこと、魔女は女性とは限らず、結局は政治の道具でしかなかったこと等々、魔女狩りに関するあまり知られていない基礎知識を豊富な資料に基づいて教えてくれる。合理主義とヒューマニズムに彩られたルネサンスの最盛期、地動説や万有引力など天文学上の発見が相次いだ科学の時代に、ほかならぬ彼ら知識人を含む上流階級社会において、このような血塗られた歴史が刻まれていたことは驚嘆に値する。
 拷問中の犠牲者の肉声の記録や、犠牲者が家族に宛てた手紙等は読むに忍びないものがあるが、著者の穏やかな語り口には救われる思いがする。四十年近く前に書かれたにもかかわらず、数多い類書に埋もれることなく版を重ねている理由もそこにあるのだろう。不快な歴史を語りながらも読者を決して不快にさせない名著である。
歴史の暗部をえぐり出している ★★★★★
歴史には関心の薄い私ですが、それでも中世のどろどろした世界には妙に興味があって、色々と探し回って本書を発見しました。

まさに名著だと思います。なぜ魔女狩りが発生し、そしてそれはどのように推移して行ったのか、どのように悲惨であったのか、とてもわかりやすく書かれています。

魔女狩りはキリスト教国の恥部だと思いますし、現代人は、ユダヤ人迫害や原爆と同じような意味で、もっとその歴史的真実を知らねばならない、という気持ちを強くしました。

ちなみに、錬金術師は異端審問の対象となってもよいように思うのですが、錬金術師が魔女として処刑されたという記述は本書にはありません。また、フリーメーソンとの関係もよくわかりません(同時代に存在した訳ですから、無関係のはずはないと思うのですが)。ここまで触れられていれば、本書は完璧な本といえるでしょう。
「ヒューマニズムと実証主義のルネッサンス時代は、一方では残虐と迷信の時代であった」 ★★★★★
中世キリスト教国の異端審問の歴史における「魔女裁判」について記述されている。「世界国家」統轄のために作った異端審問制度により、いつしか魔女は異端者であるものとされ、「魔女裁判」にて残虐な拷問・処刑を執行されるまでになった。衝撃的だったのは、「ヒューマニズムと実証主義のルネッサンス時代は、一方では残虐と迷信の時代であった」との記述である。ルネッサンス時代は近代科学の始まりであり、多くの著名な科学者がいるが、彼らまでもが「魔女裁判」肯定派であったとは信じがたいことであった。また、1)知識はその所有者次第で最高の悪徳となる、2)狂信と政治が結びついたときの恐ろしさを認識すべし、3)科学の敵は宗教でなく神学的ドグマである を歴史的教訓として理解できたことはよかったと思う。