イデオロギーに汚染されているが、考察は見逃せない
★★★★☆
元々、小学館の日本の歴史を学術文庫で再販し、多少の加筆を加えた本。
但し、それでも時代にそぐわない部分も散見できる。赤報隊の記述については、マツノ書店より復刻された相楽総三・赤報隊史料集や、学研より出版された幕末諸隊録―崛起する草奔、結集する志士 (新・歴史群像シリーズ 14)を参考にすれば、既に考察として時代遅れとなった感は否めない。更に当時のマルクス史観的な視点により、排他的な見方に鼻に付く所もある。
それでも田中氏の史観で捨て難いところはある。戊辰戦争の戦争被害を論じるところで、新政府・旧幕府側双方に責任ありとする文章である。
戦争の加害者はあくまでも武士層であり、農民達は被害者である点は見逃す所は出来ない。
過去にこういった歴史観があったというに留める本でも、視点については参考になりうる本であります。