インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

参謀本部と陸軍大学校 (講談社現代新書)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
Amazon.co.jpで確認
官僚機構の通弊か ★★★★☆
 この書は参謀本部と、その人材の供給元である陸軍大学の欠陥に焦点を当てて詳述したものです。
 本来、陸軍の統帥を司る参謀本部は政治優位の下、これと同調しなければならないにもかかわらず、戦前の軍部が独走したのは周知の事実。

 その理由として、本書は次の欠陥を指摘します。第一に「戦略なき戦術教育」、第二に「兵站及び情報の軽視」、第三に「将帥の教育と幕僚の教育を同時に追求したこと」、第四に陸軍省及び参謀本部の中枢は陸大出身者がその殆どを占めたこと、第五に、統帥権の独立を理由に「(陸軍は)組織全体の権限が政治によって侵されるおそれが生じた場合は……頑強に抵抗する」こと。

 参謀本部に限らず、どのような組織も、とりわけ官僚組織は、その人材教育、機構・運営方法を定期的に見直さなければ、硬直化して惰性で動き、場合によっては信じられないような非合理的な判断を下してしまうということが、あらためてよく分かります。

 官僚機構特有の通弊の原因を考える上でも役に立つ一冊だと思います。
今も変わらない日本の弊害 ★★★★★
幕末から大東亜戦争敗戦までの歴史には興味があり色々読んでいるのだが、大東亜戦争真っ最中ですら、日本政府が統合的戦争指導が出来ていなかったことを改めて認識。陸軍と海軍がそっぽを向いていたのはよく知られているが、陸軍省と参謀本部、参謀本部内の作戦課と情報、兵站がかくもばらばらで、統合できる指導者が誰もいないというのが、今日の日本の政府、政治ともシンクロする。1戦争目的とシナリオが各部門からの寄せ集めで玉虫色かつ他力本願、2陸軍大学校恩賜軍刀組(学業秀才)が事実を無視して作戦をでっち上げる硬直した官僚機構、3首相東條英機すらミッドウェー惨敗を知らなかったという指導者に情報が集まらず権限もない統治機構。今の日本にもそのまま当てはまる。明治政府初期か徳川幕府初期のように、暴力的に既成勢力を破壊しないとこの国は統合的に指導できないってことか。
欠陥ある組織と陸大教育の失敗の悲劇。 ★★★☆☆
政治と軍事の分離から実現した「参謀本部」、黎明期から日露戦争までは良くても、統帥権の独立で政治と軍事の一体化にならず、政略と戦略が統一できなくなっていく悲劇を辿っていく書である。陸軍の基礎を築いた大村益次郎から、山県有朋と西郷従道の政府直轄軍建設、陸軍大学校にメッケル招聘、日清、日露、第一次大戦、日中戦争、太平洋戦争と絡ませながら、参謀本部の統帥組織と陸軍大学校の教育問題を記している。問題は、藩閥出身仲間が実力ある時代は政戦略の統一は可能だったが、大正から昭和は政治と軍事の間に実力者不在、欠陥ある組織のみとなったことだ。統帥組織は政治関与を拒否し、統一意思決定や戦争指導は出来ない。また参謀本部が一元化されていた軍令機能が、日清戦争の後には陸軍参謀本部と海軍軍令部に二分化してしまった。一方で陸大の教育は実戦的作戦指導に終始、大局的判断能力の開発が出来なかった。総合的な戦争指導能力が欠如した教育のまま、情勢の変化に応じた人材育成が出来ずに、日中戦争、太平洋戦争に突き進んでしまった。挙句に田中新一、服部卓四郎、辻政信、瀬島龍三などという参謀、牟田口などという軍人を出してしまった。ところで本書の評価が三ツ星は、文春文庫の「陸軍参謀ーエリート教育の功罪」三根生久大著を先に読んであまりに良かった為、相対評価で本書がかなり下がってしまった。戦史や組織や教育の説明以外に、具体的参謀名登場やその記述が多く欲しかったこと、また近時の日中戦争、太平洋戦争の記述が65ページ(全体258ページ)と少ないことが、残念に思った。
具体的に軍上層部の姿が理解できました。 ★★★★☆
●歴史や戦記の本をかじった程度で大文字の軍部一まとめの印象だったなんとなくこんなもんだろうというぼんやりとしか考えが改まりました。初めて上層部の具体像を掴みかけました。例えば巷間伝わる海軍と陸軍の違いなんてのもそうですが省部と統帥部の違い、参謀と指揮官の違い、同じ参謀同士指揮官同士でも中級と上級でも違います。また軍政に長けた人、軍令に長けた人、また兵科の違い、兵科が違うと修めるカリキュラムも若干違ってきます。自分の印象として砲兵・工兵は特殊技能を駆使できてインテリ層で他の兵科と比べて異端で気位が高そうな集団だと感じました。こういうミクロの視点っていいですね。幕府とかも職制で解説されるとすごく身近な組織に感じました。統帥権干犯問題で引き合いに出される軍部という存在、まったく一枚岩ではなかったということです。統帥権の解釈自体も陸海で違うし省部と統帥部でも異なる、権益ももちろんです。なんと大雑把な理解だったのでしょう、私は。●ただやはり日本式軍事システムの発祥から衰亡を扱ってますので戦記的な要素が過分にあります。自分としては陸軍大学のカリキュラムと参謀本部の職制だけをミクロにねちっこく扱ってもよかったんじゃないかと思います。そっちをかなり期待してましたので。●海軍の影がかなり薄いです。やはりこの本、ひいては日本軍の主役は陸軍だったということでしょうか。海軍の幹部候補養成学校である海軍大学もまったく言及していません。陸軍〜との違いを触り程度でいいから紹介してほしかったです。●海軍軍令部と陸軍参謀本部の違いももう少し教えてほしかったですね。どこが違うのでしょう。●政治家の影が薄いです。もうちょっと彼らがどう軍部に絡んだのか知りたい。というか内閣には戦争指導の権限は皆無だったと、読んだ印象としてはそうとしか受け取れません。●省部のほうも若干影が薄いですかね。もうちょっとこっちも仕組みを知りたいです。強力ではありませんが時に重要なキーを握る存在でもあります。●石原莞爾と山県有朋以外は人物描写が浅い、ほかの人はまあ功績は詳しいんですが風のように通り過ぎて行った男たちみたいな感じでした。●戦術教育中心の弊害を説いていますが10のうち1くらいは利点もあったのではないでしょうか。それも知りたい。例えば総司令官が無能でも各々の解釈で善処し事に当たるので比較的当たりはずれがなかった大負けしなかったなど。戦略眼がなかったとしても局地的な名将はいたはず、そういう列伝もいくつか載せてほしかったです。●下士官兵士の視点は一切抜け落ちています。こんな欠陥組織で使役された彼らこそいい面の皮だったでしょうに。本書の趣旨から仕方ないのでしょうけれど。●欠陥のある組織でも能力と人望を兼ね備えた人間が束ねれば少々の問題は乗り越えられる、逆に非凡な人間が使いこなせたからといって続く凡人たちの為に抜本的な改善やメインテナンスを怠ると後々重篤な事態が起きうる、以上を学びました。
軍部の独走を許したものは何か? ★★★★☆
本書は防衛庁防衛研究所戦史部主任研究官である筆者が
戦前の参謀本部と陸軍大学校の組織論・教育論から
先の大戦に至る軍の構造的欠陥を詳述した書である。

もともと参謀本部は、政治の軍事への介入を防ぐために設置されたものだが、
伊藤博文や山県有朋など政軍両方を統括できる指導者が退いた後、
政治からの歯止めがきかない組織として残ってしまった。

また陸軍大学校の教育も高等用兵という戦術の研究に偏り
政略や戦略の研究が疎かだっただったにもかかわらず
その卒業生が参謀本部を牛耳ったため、戦争指導構想がまったく無かった。

その結果が敗戦となるわけだが、55年体制が崩壊した今、
政治からの歯止めのきかない官僚組織、国家戦略のない大学と
置き換えると、経済的にも再度敗戦するのではないかという危惧は
果たして行き過ぎだろうか?