伊豆の頼朝、‘怒め坊’弁慶、熊野の新宮行家・・・表舞台へ!!
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平治の乱で敗軍の最中、父義朝一行と逸れ、そのため一命を拾った
伊豆蛭ヶ小島の源頼朝。世は平家の威光のなか、隠者の暮らしを
自他共に許してはいました。しかしながらこの人、持って生まれた
何かがありました。この忍従の日々を歴史は忘れてはいないのです。
北条政子が嫁ぎ、北条・三浦・仁田・佐々木・安達・比企と
頼朝を巡る衛星たちは今や遅しと輝き処を求めていました。
山門の座主明雲横奪の一件で西塔の怒め坊こと弁慶も登場。
後年の義経主従を支える偉丈夫はまだまだ若く純粋なこと・・・・。
彼の郷里は紀州田辺の熊野。なんと平泉からはるばる義経もこの地で
臥薪嘗胆の日々を送る叔父の新宮行家と出会い更に源氏待望の
思いを深めて行きます。
そのまとめが世に名高い‘鹿ヶ谷’の謀略。
俊寛、大納言成親、平判官康頼、丹波少将成経ら平家と有縁の
人びとです。もっとも彼らは後白河法皇の操り人形のようなもの
平家衰運の契機となる出来事でした。
それにしても、北は奥州から紀州熊野まで・・・・。
スケールもさることながら、吉川先生の筆致やものがたりの妙は
これほどまでに読者を惹きつけて止みません。
劇的な中に生まれた和子こそ春宮言仁、後の安徳天皇その人です。