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竈神と厠神 異界と此の世の境 (講談社学術文庫)

価格: ¥1,103
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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異界への畏れ ★★★★★
文明の利器に溢れる現代日本。
僕らの住む家には丑三時でも煌々と明かりが灯り、闇とは全くもって無縁です。
しかし僕が子供の頃過ごした家は、まだ古い日本の住居の様式を残していました。
夜の家は暗く、天井に線を這わした裸電球が辛うじて闇をボウッと照らしていました。
一人で行く便所の怖かったこと。
夏の湿気を含んだ古い家が軋む音に、思わずそれを我慢してしまったことを思い出します。

本書は竈神や厠神といった、いわゆる「家の神」に焦点を当て、古い日本の土俗信仰を掘り起してゆきます。
日本人は土間や納戸、厠といった、家屋空間の「闇」の部分に、異界との接点を感じてきました。
そしてその場所に死と再生の営みを見、神を祀り明日の豊穣を祈ってきたと、本書はそう言います。
現代の科学の目で見ればそれは「空想」の一言で片付けられてしまうでしょう。
しかし人間の持つ「空想」の力は、科学の前に簡単に唾棄し去ってしまうほど空しい物ではない筈です。

あの日、僕が闇に感じた気配や恐れ、それはそのまま「家の神」の気配に他ならなかったと思えます。
万物に何者かの存在を感じられあの日の心は、今よりも幸せであった気がします。
自然との共生が声高に叫ばれる昨今、山川草木にも、そして家というミクロコスモスにも神を見てきた
僕らの先祖の心を、今こそ思い出すべきでしょう。
そう思わせてくれる良書です。