天使の通り道
★★★★☆
不治の病に冒された26歳の小麦はパティシエール。
東京での修業期間を早々に切り上げて、伊豆の実家に帰ります。
亡くなった父の遺志であるケーキ屋をやるために。
母、兄、兄嫁などの手を借りて奮闘する感動物語。
いえ、わたしはそんなことでは感動しません。
でも、この小麦は夢のために体を犠牲にしていくんですね。
自分が倒れても、この店は守り、
兄嫁に引き継いでもらいたいと願って。
その執念がすさまじい。
こんな根性物語、久しぶりに読みました。
そしてなによりも、この兄夫婦には
ちょっと変わった子どもがいます。
見た目には発達障害にみえる彼、叶夢(かなむ)は
天使が見えるのです。
そのたった一人の友だちのレイは、妖精になるか
天使になるかのテストを受けなければなりません。
その彼を応援すべく、
引っ込み思案で運動も得意でない叶夢も頑張ります。
また、初めてのお店をオープンさせた時
レイが「ここ、はやらないよ」と言います。
街には確かに流行らない場所というのがあって
お店がころころ変わる所ってありますよね。
それは天使の通り道じゃないからだそうです。
よく「運」といいますが
この物語では「オーラがおいしい」といいます。
小麦のオーラはおいしいので、レイなど天使たちは大好物。
反対に兄(叶夢にとっては父)のオーラはくさい(笑)。
だからレイは小麦のことを応援したいと思うのです。
このように、天使のレイがアクセントになって
人間の努力だけ叶えられない部分を
物語の中で負っていきます。
相変わらず雑さも目立つのですが
こんな天使の存在を信じたくなりました。
とても暖かい気持ちになれるお話
★★★★★
一気に読んでしまいました。
パテシエールの若き女性が自分のケーキショップを開き一度は失敗するものの再起をめざして頑張る物語です。
主人公のひたむきな頑張りとそれを支える家族の愛情溢れる支援の数々が読んでいてとても気持ちを暖かくしてくれます。
愛情と暖かさと哀しみの混ざったとてもよいお話です。
作者の優しさが感じられる物語
★★★★☆
帯広告にもあるとおり、この作品のテーマは、「天使」。
冒頭、子どもを宿した君川道恵と、夫の代二郎は、妹の小麦と母香代子を交え、誕生する男の子の名前について議論し、夢を叶えるという「叶夢(かなむ)」にすることを決定する。
やがて誕生した叶夢は成長に従い、ちょっと変わった子になってしまう。
「天使」のレイが傍らにいるというのだ。
それは、周りの大人には全く見えない存在だった…。
物語の主人公は、君川代二郎の妹、小麦。
26歳の彼女が、東京での修行後、母と兄夫婦の住む、故郷の北伊豆に戻り、念願の洋菓子店を開き、奮闘する姿を描いていく。
若さで何でも乗り切れそうな彼女には、身体上大きな問題を抱えていた−−というのが、ストーリー展開の大きな鍵となっている。
大人に見えない何者かが子どもには見えているという設定では、宮崎駿監督の「となりのトトロ」が想起されます(ファンタジックな作風という点も似通っている)。
両作品とも、周りの大人はその存在を信じるかどうかはともかく、子どもに対して、否定的な態度は取っていないということで、「優しい」人達の描かれる作品となっています。
本作品では、いわゆる悪人は登場しません。
みんな、優しい眼差しを持った人物です。
にもかかわらず、主人公、小麦が苦難に立たされるのは、物語の前半で明かされる、悲劇的な運命からなのですが、これに「天使」がどのように絡んでくるのかが、本作品の大きな読みどころとなっていると思います。
作者はもともとミステリ畑の方のようですが、本作品はそこから離れた作風の作品となっています。
ひねりを加えたストーリーではなく、逆にかなりストレートな展開の作品ですが、ずっしりと読者の心に響く作品になっていると思いました。
特に、表紙の絵には注目です。
読み終わってみると、いかにこの作品をうまく表現しているかが、実感させられます。
オーラがくさいって・・・^^
★★★★☆
家族と病気と夢と努力のお話です
このキーワードが好きな方はぜひ読んでください
一生懸命頑張れんば、応援してくれる人はいる
夢は努力すれば叶う
あたりまえだけど、実践するのは難しい
そんなことを優しく教えてくれる1冊です
きっとお兄さんのオーラも本当は
おいしかったはずです^^
10月現在、2010年に読んだ中でNo.1です。涙が止まらない。
★★★★★
ミステリ作家として定評のある雫井脩介氏による家族小説です。
本作はミステリではありません。が、著者の描く世界はとても濃厚で温かく、ミステリ作家ではなく純文学作家だったのかと思うほど美しい内容でした。
舞台は北伊豆の小さなケーキ屋さんです。主人公とその家族(母、兄、兄嫁、甥)による優しい物語です。
「人生って、やっぱり夢を叶えるためにあるもんだしね」
主人公小麦がつぶやく言葉ですが、頑張って夢を叶えようとする彼女とそれを支える家族との暖かな会話の端々に、人生や家庭や愛や生きる意味を感じます。
きっと天使はいるのだと思います。何も与えてくれはしないけれど、傍にいてくれるのだと思います。
私は何度も何度も涙を流してしまいました。
これ以上の言葉は必要ないと思います。
是非読んでみてください。きっと、この切なく哀しく優しい物語に涙するでしょう。
2010年10月現在、今年読んだ中でNo.1です。