主に社会思想系分野における「メディア」研究をわかりやすく簡潔にまとめた入門書。

「メディアの物質性・歴史性」「メディア社会の構造」「グローバル化と文化の移動」「メディアの表象文化」などの章からなり、各テーマを２〜４ページで解説する。

この本は確かに「メディア」にまつわる幅広い見地を提供しうるが、とはいっても、やはり「メディア」と名のつく分野は広大であり、一筋縄には紹介しきれないことが、本書の内容からわかる。

大雑把に言えば、本書は「メディア」というモノ『自体』を考察し分析する立場の研究を中心的に扱っている。

つまり、社会（政治社会・経済社会・市民社会etc）の中にある機関・組織・制度としての「メディア」（例えばマスメディア機関、マスメディア制度など）が社会に果たす役割を論じるというよりは、
マクルーハンの"media as a message"論に代表されるような、マスメディアや情報装置だけでなく、森羅万象あらゆるモノを含めた「メディア『自体』」の構造や性質を考察する研究を主に紹介している。

したがって、必ずしもメディア研究を網羅した内容とはいえないことから、評価を３点とした。

前者の観点からの「メディア」あるいは「メディア」を通した「コミュニケーション」研究については、『コミュニケーション研究―社会の中のメディア』（大石裕，慶應大学出版会）などを参照されたい。