構成は第Ⅰ部~Ⅲ部の全10章。第Ⅰ部はまず、ニュースバリュー、客観報道といった視点からニュースの特質や生成過程を解説、ニュースが作られたものであることを確認する。さらに単純な功罪を超え、それが社会でどう機能し、逆に社会にどう影響されるか、マス・コミュニケーション論やジャーナリズム論を踏まえて考察される。取材源の秘匿や取材マナーなど個々の取材活動が、権力からの自律と不可分である点は、マスコミ志望の人は必読だろう。
第Ⅱ部では、印刷、放送、マルチメディアの具体的な構成や機能の現状を分析。記事、番組などを検証する内容分析研究の必要性が論じられる。また、第Ⅲ部では、報道記事の無署名性といった従来の論点とともに、書き手のステレオタイプな価値観の表出が、常識を再生産しているというユニークな考察を行う。続くニュース流通のグローバル化・政治学の章でその問題を発展させ、ニュースが西欧対非西欧といった文明の衝突、つまり「われわれ」と「彼ら」を峻別する役割を担っていることを指摘する。これは従来のジャーナリズム批判、ニュース論に大きな示唆を与えるだろう。
各章は本文に加えイントロダクション、キーワード、コラム、設問で構成される親切な作り。先行研究の引用や参考文献が豊富なのもうれしい。(棚上 勉)